108話▽テーブルは回される ページ12
その時、軽快な足音が廊下に響く。
それは指令室から出てきたスパンダム長官のものであった。
事の重大さを理解していないのか、彼は呑気に鼻歌交じりで私達に近づく。
彼が手にしていたのはゴールデン電伝虫ではなく、衛兵と連絡をとるための子電伝虫。
「世界政府に逆らったバカ共の"成れの果て"を一緒に聞いてみようぜェ……」
エニエスロビー本島からの緊急の報告。
あそこには……以前私も殺されたことのある、巨人族の門番がいる。
いくら1億の男だろうと、無傷で済むとは考えにくい。
ロビンさんは表情を崩さないものの、その目には動揺の色が窺えた。
(悪趣味な……！)
しかし蓋を開けてみれば、予想とは180度違う実態。
その場にいた私達は、衛兵からの切羽詰まった報告を聞いて皆声を失った。
海賊達が裁判所まで攻め込んでいること。
オイモさんとカーシーさんが向こう側に寝返ったこと。
長官はもう聞いてられないと、電伝虫を投げ捨て指令室の中へ駆け込む。
(バスカビル裁判長……ご無事、ですよね)
「うははは」
「……」
心拍数が上がる。
じっとしていては立っていることもままならなくなりそうだ。
私も外の様子を確かめようと、長官の後を追いかけるように部屋へ入る。
「……！？
ブルーノ……！？」
『あの男……麦わら……！』
曇りのない大きな窓ガラスには、裁判所屋上にある2つの人影が鮮明に映し出されていた。
「……"正義の門"へ行くぞ……」
『え？しかしまだ船は……』
「先にくぐっちまうんだよ馬鹿！
アイツらを絶対に海賊共に渡してたまるか！！
CP9を召集する！！！お前もいつでも出れるよう準備をしろ」
長官はそう言い残すと、指令室の外でも同様に指示出しをする。
"指令長官"は名ばかりではないらしい。
尤も秘書官として彼に数年仕え、その指揮力が十分であることは重々承知していた。
それでもやはり、足が動かない。
縫い付けられたようにその場で立ちすくむ私は、ブルーノさんの戦局を見届けることとなる。
侵入者の男が、蒸気のような煙を体から放出する。
人間業とは思えないそれに、私は止め処ない胸騒ぎがした。
(い、嫌だ、ブルーノさん)
料理が上手くて、優しい目をしていて、いつもみんなのことを気にかけてくれる人。
そして六式使いで、うんと強くて、追い詰められているところなんて見たことなくて、それで──……
「"
『……ぁ』
──大切な人。
彼がうつ伏せに倒れると同時に、私も膝から崩れ落ちた。
瞬きの仕方も忘れた瞳はすっかり乾き、涙も出ないままに。
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なめこ(プロフ) - 綺世さん» 綺世さん、コメントありがとうございます！ルッチの魅力を伝えるのが中々難しかったので、そう言っていただけて嬉しいです〜……！機会がありましたら、次作の際も宜しくお願いします！ (2023年3月4日 9時) (
レス) id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
綺世(プロフ) - 完結おめでとうございます！この作品に出会い、ルッチ推しになってしまいました。次作も楽しみにしています！執筆お疲れさまでした！ (2023年2月28日 14時) (レス) @page50 id: 782601e7a1 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - Jaさん» Jaさん、嬉しいお言葉ありがとうございます〜！長い作品なのにありがとうございます……笑 引き続き更新頑張って行きます！ (2023年2月1日 19時) (レス) id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
Ja - とても面白くて昨日から一気読みしました！！更新これからも頑張ってください！！ (2023年2月1日 9時) (レス) @page40 id: f8125b9f7e (このIDを非表示/違反報告)
なめこ(プロフ) - 酢さん» 酢さん、ありがとうございます……ご満足いただけたようで何よりです笑 CP9沼の民の妄想に、最後までお付き合いいただけますと幸いです！ (2023年1月22日 16時) (レス) id: 1b44704fa6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なめこ | 作成日時：2022年12月3日 15時
