Name of You

YOU ページ4

笑いたくもないのに目の前のおじさんの話を聞きながら笑顔を作る。

バカみたい。

でもこれも仕事だ…。

器用に話を右から左に流しつつきりの良さそうなところでにっこり笑って相槌を打つ。

たったこれだけの事で大抵の人は満足するんだから…案外他人って人の事見てないんだよね。

そういえばさっきの男…どうしてるかな？

何年もモノクロの世界で生きて来た私にフルカラーで映ったあの男…どんな奴で何してる奴なんだろう？

おじさんの話を聞いてるふりをしながら眼の端で探すと…居た。

ほら、あいつだけカラーで浮き上がってるみたいに見えるんだもの探そうとしなくても目が捕らえるよね。

一瞬、ほんの一瞬だけどホントに笑えた気がする。

やっぱりあの男じゃなきゃ駄目だな。

私をモノクロの世界から出してくれる人…。やっと会えたんだから。

おじさんの話もひと段落したみたいだし

「では、他の方にもご挨拶に行ってきますね。貴重なお話ありがとうございました。」

と笑顔で頭を下げてその場を去ると、腕を後ろに引かれた…

誰？

??「さっきイェソンと話してただろ？お前がタレントに興味示すなんて珍しいな。」

はい？あの男、今日出てたグループの奴なの？

こんな仕事しててなんだけど、別にタレントになんて全く興味がない。

コンサートの最中もタレントに背を向けてお客さんに注意を払うのが仕事なんだし、ついでに言えばやる事はどのタレントでも同じだからね。

はぁぁぁ…タレントか…厄介な奴がカラーに見えちゃったな…。

「そう？全然タレントっぽく見えなかったから…。」

同僚のチホに返事をする。

TH「そんな事だろうと思った…。気をつけろよ？今をときめくスーパーアイドルの一人だからな。」

「私を誰だと思ってるの？」

TH「ユウ…だろ？」

そう、私はユウ。英語でお前とかあんたとか良く言えばあなた。YOUそれが私の呼び名。

「誰にも落ちない、靡かない…。でしょ？」

心が無いんだもの。落ちたり靡いたりなんてするはず無いじゃない？

でも…あの男は…

私の眼にカラーで映るあの男は…

違うのかもしれない。

目の端であの男がこっちを見ているのが解った。

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