Name of You

私を抱いて　YS side ページ1

「ねぇ、今夜私を抱いて…」

コンサートの打ち上げの何軒目かの店で聞きなれない声が俺の後ろから落ちてきた…

正直、こういうことはたまにあるんだよ…

たいてい媚を売るような顔で笑ってる女がそこにいるんだ…

俺はそんな反吐が出そうな女を抱くつもりは無いけどな。

聞こえないふりをするべきか…一蹴するべきか…

「お願い… を て…」

なんだって？

汚いものでも見るかの様な目で振り返ると…

思ってもみなかった女が立っていて思わず自分の目が大きくなるのを感じた

YS「なんで…俺なんだ？」

そこに立っていたのはまるで人形のような無機質な目をした、上品そうな女だった。派手な奴でもその辺の男と一夜を共にして喜ぶような女にも見えない。

俺に興味がある…とも思えない…

なんで…俺にそんなことを？

少なくともその部分で俺はそいつに興味を持ってしまった。

「一番…優しそうだったから」

俺がか？優しそう？何をどう見たら俺が優しそうに見えるんだ？

優しそうってだけなら、そこにいる魚達や女子力満点なんて言われてる奴らや自分で天使なんて言ってるヒョンのほうがずっと優しそうに見えるだろう？

YS「俺が？優しそう(笑)」

見る目が無いにもほどがあるな。

生憎、俺は行きずりの奴に優しくする様な奴じゃないんだよ。

「そう。私に命を分けて、優しく捨ててくれそうだったから。」

ガラスみたいな目で俺を見ながらそう呟いた。

命を…分ける？

何言ってんだよ？この女

YS「悪いな。俺はそんなに優しい奴じゃない。」

「あなたは…優しい人。私には判るから。私がそう思ったんだからいいの。」

おいおい…話が通じてんのか？

「私の虚ろを…あなたなら埋めてくれる。」

「あなたなら…命を吹き込んでくれるでしょ？」

なぁ、命を吹き込むって何なんだよ？

全く…気持ちのいい席なのに俺の関心はこいつに全部奪われてしまった…。

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