plane ページ22
飛行機を追うように走って行った智は、今は 俺と相葉くんとは離れたところで寝転がり、
とんでいった飛行機の残した 線状の雲が、途切れていく様子をじっと見つめていた。
ときどき、手を空に伸ばしては、ひこうき雲をなぞるように指先が動く。
「大丈夫?」
地面に描かれたやけにリアルな相葉くんの片方の眼。
その上に手をついて、上体を起こした相葉くんが、苦笑いで言った。
「ありがとう…引き離してくれて(笑)、慣れてるから大丈夫だよ?」
智に口づけられたほうの目を、ぐしぐしと擦る。
「慣れてるっつってもアレは、さすがに……アナタ心広すぎでしょう」
「アハハ、そうかもね…(笑)でもたしかに、ちょっと参ったかなあ…」
ふう、と息をついた相葉くんは、智のほうを優しげに見つめた。
消えかけのひこうき雲をなぞるのに夢中だ。
「カズは…、大ちゃんが何してるか、分かるんだね」
「え?」
相葉くんの目は、覗いてみれば たしかに奥の方が緑がかっていた。
その瞳が、憂いを帯びて深い色になる。
「今だって…、大ちゃん、不思議に手を動かしてるじゃない?(笑)
でもカズは分かる。ひこうき雲を指で辿ってるんだ、って」
「ああ…そんなこと」
「誰でも分かることじゃないよ。少なくともさっき、大ちゃんを囲ってた人たちはみんな、飛び降りるんじゃないかってヒヤヒヤしてた」
「風で遊んでただけなのに?(笑)」
「ふふ…、そう。街をよく見たかっただけなのに…」
この人は、俺と同じように智を見てる。そう思った。
いや、この人と智が過ごしてきた時間の長さを思うと、俺以上に知っているのかもしれない。
「でも…、相葉くんはあんまり智と一緒に居ないよね?」
率直に、頭に浮かんだ疑問を口にすると、彼は表情を曇らせた。
----『ねえほんとはやってないよね?大野じゃないよね?』
----『…仕方ないよ……、いつも…ああなんだ……』
あのとき。窓ガラスが割れていて、智が犯人に仕立て上げられたときと、同じ顔。
「あの…ゴメン、嫌なこと聞いちゃった?」
二人の関係に踏み込んでしまいそうになったことを、すぐに詫びると
相葉くんは顔を上げて、苦く笑った。
「いや…ううん、オレが悪いんだ、…大ちゃんと、一緒にいるのがちょっと…
…疲れちゃって」
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作者名:きんにく | 作成日時:2020年4月19日 0時