検索窓
今日:2 hit、昨日:9 hit、合計:74,394 hit

noon(side S) ページ32

.



「あれ…?夏風邪にしては遅いし酷いよ?最近なんかあった?」



.



9月。


2学期が始まって間もないときに、大野くんが山本先生に抱えられて保健室に来室した。


腕の中でぐったりしているので、どうしたのかと聞くと、「授業中にスズメが教室に入ってきて、それを追いかけて廊下に出た、そこで急に力尽きた」のだと言う。

毎回、大野くんの主訴もまあまあマヌケだけど、山本先生の気の抜けた顔の方がマヌケで、苦笑いしてしまう。


それにしても大野くんは、自分の体調の変化に鈍感すぎて、こうやって倒れるまで逆にピンピンしているから怖い。


「智くん。最近なんかしんどいことあった?」

「なんも」


この返答にも、苦笑い。

身体はくたりとベッドに沈んでいるのに、きらきらと潤んだ目がこっちを「健康です!」というふうに見てくる。

嘘つけ。大熱じゃないか。


「熱が高いんですよねえ…大野さん…久しぶりなんですけど……」


ふざけた口調でゆっくりと言って、目元をくすぐるように撫でたら、あーそれそれ…というように目を細めた。

くすりと笑うと、真似をしたのか、大野くんも、クスリ。


「ふふ…ほんとにしんどくないの?」

「うん」

「そっかー」


氷枕を敷いて、布団をかけた。

さむい、と言うので毛布もかける。


さりげなく全身状態を確認したら、やけにほっそりとしているのが気になった。


最後に会ったときも、消耗したように痩せていたけど、あの時から体重は戻らなかったらしい。

今の体型がものすごく悪いわけではないが、これ以上痩せられると、もともとのふっくらした頬を知っているだけに、かなり心配である。


「最近ちょっとお遊びが過ぎるって、山本先生が困ってたよ?」


細い手首を心配しながらも、直接は触れないことにした。

二宮くんが入院していたとき、荒れに荒れた大野くんを見ているので、こうやって穏やかに笑って、目を合わせてくれることを、今は大切にしたかった。


「授業は座って聴かないと…ね?」

「もうしない」

「本当か〜?」

「ほんとだよ、約束する?」


小指を出してきたので、吹き出してしまった。

「ふつう先生が出すんだけどなあ」と言うと、あは、と無邪気に笑ってくれた。


仕方がないので指切りをしてあげると、興奮したのか…さらに元気になって、



絡んだ小指を、そのまま


小さな口に食べられてしまった。

eat me(side S)→←Monsoon(side O)【The Floor『内緒話』より一部引用】



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (195 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
170人がお気に入り

アイコン この作品を見ている人にオススメ

設定タグ:大野智 , 二宮和也 , 大宮
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

きんにく(プロフ) - あっちゃんさん» →もしかしたら誰かの気を悪くしてしまうかもしれなかったお話ですが、こんなふうに温かいコメントを、時間が経っても頂けることを本当に有り難く思います。なんだか下手な解説みたいになっちゃいました。読み返してみると恥ずかしい所だらけなんですけどね(笑)あはは (2021年5月6日 18時) (レス) id: bf5ab865ef (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - あっちゃんさん» ガバっと素直に詰め込んでみたお話です。こんなふうに生きてゆけたならそれはそれは眩しいのではないか、とゆう想像の羅列です。完璧に無邪気であることの尊さに憧れながら、そうはいかないことへの失望までを、人生のうちに一度は文章にしてみたいなあと思っていました (2021年5月6日 18時) (レス) id: bf5ab865ef (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - あっちゃんさん» あっちゃんさんお久しぶりです!読み返して頂いて本当にありがとうございます。ピアニッシモにコメント!?とめちゃくちゃビビりましたが、あまりにも温かい言葉に私のほうが泣きそうになりました(笑)とても嬉しいです。ピアニッシモは、私の憧れみたいなものを、→ (2021年5月6日 18時) (レス) id: bf5ab865ef (このIDを非表示/違反報告)
あっちゃん(プロフ) - →思うように過ごせていることを切に、願いたいものもです。回りの雑音なんて気にしない生活を送らせてあげたい。とそんなことを思いながら。長々と失礼しました。これからも素敵なお話をお待ちしてます。いつもありがとうございます。 (2021年4月29日 14時) (レス) id: 178db8b66c (このIDを非表示/違反報告)
あっちゃん(プロフ) - →最後の章は。もう涙が止まらなくて。小説を読んでこんなに泣いたことなかったなあ。…これを書いていても涙してます(´;ω;`) 。そんなお話を書けるきんにくさんが素敵!現世の彼が。同じようなことにならなくてほんとによかったと思うと共に休止中の今を自分の→ (2021年4月29日 14時) (レス) id: 178db8b66c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:きんにく | 作成日時:2020年6月7日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。