promise u(side O) ページ28
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「それと…この耳で聞こえたことは」
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身体中を確認しつくした先生は、顔を包むように、大きな両手を当てがった。
その手の形で耳に触れられる。
あったかくて気持ちがよくて、日向ぼっこのときのように、肩の力が抜けた。
「誰に…だれに、どんなにバカにされても、分かってもらえなくても」
先生の目が潤んでいる。
大人の目だ。そのまま、ここで今、煙草を吸ってほしい。
先からつうう…と伸びた煙を、口に入れられたら、どんなにいいだろう。
どんな味がして、どんな温度なんだろう。
そういえば、先生の煙はいつも、秘密ひみつ…というふうに伸びて、なんにも教えてくれなかった。
「俺が、絶対、信じてやるから」
それっていったいどういう意味だろう…と思ったけど
「信じてやる」と言われたことがなく、それがとても嬉しくて
ちょっと照れくさくて、とりあえず、下唇を噛んでおいた。
信じてやる。
信じて、やる。
理由がみつからないまま、ぽろぽろと止まらなくなった涙を、先生が全部拭ってくれるので
自分の袖を濡らす必要がなかった。
「…あ、ぁ」
不思議だったのは
こんなにも優しい言葉と、嬉しい手つきが、シャワーみたいに振ってくるというのに
胸のおくが、ぎゅうぎゅうに絞められたこと。
涙は怖いくらいに溢れるし、手先も、痺れてきた。
「うー……」
「泣くな…」
さっきまで、先生が泣きべそだったくせに。
---『4月になったら、遠くに行く』
遠くに、行く。
ふわふわと柔らかな、群青色の毛布は、もう美術室になくて
煙草の香りも、もうすぐ消える。
嫌だな
「やだ……」
駄々をこねたら、もう一度抱きしめてくれた。
今度は、ゆるやかに。
だから、その腕の中で、深呼吸をすることができた。
「これ、やるよ」
先生が手に握らせてくれたのは、1本の煙草。
かさかさとしていた。これに火をつけただけで、大人のフリができる。
「お守り……、コレが吸えるようになるまで、しっかり生きること」
先生が、大事なことを言っています、という顔をするとき
おれはいつも、ぐらりと、揺さぶられる。
「ハタチんなって……まだ、苦しかったら…火、つけて…そしたら」
揺さぶられるのは、あんまり好きじゃなくて
「ちょっとはマシに……息できるから」
でももう、それも、これで最後だった。
煙草は、ポッケにしまって
涙だけが、どこにもしまえなかった。
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きんにく(プロフ) - あっちゃんさん» →もしかしたら誰かの気を悪くしてしまうかもしれなかったお話ですが、こんなふうに温かいコメントを、時間が経っても頂けることを本当に有り難く思います。なんだか下手な解説みたいになっちゃいました。読み返してみると恥ずかしい所だらけなんですけどね(笑)あはは (2021年5月6日 18時) (レス) id: bf5ab865ef (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - あっちゃんさん» ガバっと素直に詰め込んでみたお話です。こんなふうに生きてゆけたならそれはそれは眩しいのではないか、とゆう想像の羅列です。完璧に無邪気であることの尊さに憧れながら、そうはいかないことへの失望までを、人生のうちに一度は文章にしてみたいなあと思っていました (2021年5月6日 18時) (レス) id: bf5ab865ef (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - あっちゃんさん» あっちゃんさんお久しぶりです!読み返して頂いて本当にありがとうございます。ピアニッシモにコメント!?とめちゃくちゃビビりましたが、あまりにも温かい言葉に私のほうが泣きそうになりました(笑)とても嬉しいです。ピアニッシモは、私の憧れみたいなものを、→ (2021年5月6日 18時) (レス) id: bf5ab865ef (このIDを非表示/違反報告)
あっちゃん(プロフ) - →思うように過ごせていることを切に、願いたいものもです。回りの雑音なんて気にしない生活を送らせてあげたい。とそんなことを思いながら。長々と失礼しました。これからも素敵なお話をお待ちしてます。いつもありがとうございます。 (2021年4月29日 14時) (レス) id: 178db8b66c (このIDを非表示/違反報告)
あっちゃん(プロフ) - →最後の章は。もう涙が止まらなくて。小説を読んでこんなに泣いたことなかったなあ。…これを書いていても涙してます(´;ω;`) 。そんなお話を書けるきんにくさんが素敵!現世の彼が。同じようなことにならなくてほんとによかったと思うと共に休止中の今を自分の→ (2021年4月29日 14時) (レス) id: 178db8b66c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きんにく | 作成日時:2020年6月7日 0時