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Buddy(side S) ページ41

二宮くんのご両親と、今後の対応について話し合いを終えたら、もう17時になっていた。


「では…僕はこれで。濱田さんとは、一応、こちらからも連絡を取りますね。うまくいかないことがあれば、いつでも僕か、学校を通してください」

「先生ありがとうございます…、相手方も、穏やかな家族さんで…なんとかできそうです」


二宮くんの母親は、泣き止めば案外、凛としていて朗らかな人だった。ピアニストだという。


「早く回復することを祈ってます」

「ご迷惑をおかけしました…」


病室の前で、両親と別れる。

俺がしばらく廊下を進むまで、彼らは深く頭を下げていた。律儀で上品で、親しみやすい、いい夫婦だった。




.




病院の前でタクシーを拾って、行き先を告げ、スマホをタップした。

2回目のコールが鳴り終わるのを待たずに、彼は出た。


〈…はい、…終わった?今病院?〉


せっかちに続いた質問。声が、やや疲れている。


「うん、今病院出たとこ」

〈二宮は?〉

「大腿骨が折れてた。あとはガラスで切ったのと全身打撲かな」

〈大丈夫なのか?〉

「大丈夫も何もないけどさ……とりあえず絶望的な状況ではないよ、身体のほうはね」

〈…からだのほうは。〉

「…んー…あんま詳しく言えないけど…精神的にちょっと弱ってはいるみたい」

〈そう…〉

「……様子、見るしかないよ」

〈ああ…まあそれしかできないか…〉


タクシーの運転手が、ラジオのボリュームを下げてくれた。

心遣いが嬉しくて、バックミラー越しに軽く会釈をする。


「で、そっちはどう?ずいぶん疲れてるみたいだけど」


〈あー…、それがさ…〉


ふ…と電話越しでも分かるため息をついて、向こうで椅子かソファに身を沈めたような気配がした。

まだ保健室に居るのだろうか。


〈相葉はすぐ授業戻ってもらったよ…、大野だけ、気ぃ失ってたから寝かせた〉

「うん、着替えさせてくれた?」

〈もちろん。お前の白衣も洗ってるよ〉

「ありがと」


そこで、疲労を伴った沈黙が訪れた。

潤が、言葉を選んでいる。


「…どうしたの?」


〈…あー…、午前中は俺がついてたんだけど、午後からは授業あったから、山本先生に代わってもらって、で、放課後にまた、戻ってきた〉

「うん、」

〈俺のときに1回、吐いてる…、…午後は、目を覚ます度に…って言ってた〉

「ええ…」

〈あり得ないくらい、うなされるんだよ…寝てる間も〉



.

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きんにく(プロフ) - くろしばさん» 温かいコメントをありがとうございます、他の作品のことも見てくださっているのですね・・・こちらこそ感謝が足りません。日々精進していきます!ありがとうしか言葉がでなくてすみません(笑) (2020年6月1日 22時) (レス) id: ef9ab81a93 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - ゆきのすけさん» 素敵なお言葉をいただけて嬉しいです!知識不足文章能力等、まだまだ課題はたくさんですが、そう言っていただけると救われます。一生懸命書きます!ありがとうございます。 (2020年6月1日 22時) (レス) id: ef9ab81a93 (このIDを非表示/違反報告)
くろしば(プロフ) - 唯一無二のストーリーはもちろん、その繊細な文章構成や選び抜かれた表現にはいつも驚きや優しさがあり、とても強く感情を揺さぶられます。この作品をはじめ、きんにくさんの作品に出会えたことに感謝するばかりです。微力ながら、これからも応援させていただきます。 (2020年6月1日 2時) (レス) id: a32bce887b (このIDを非表示/違反報告)
ゆきのすけ(プロフ) - 情景が、主人公の表情が、心情が、胸が痛むほど繊細に流れこんできました。考えること無く流れこんでくるそれはとても心地がいい筈なのに、その分強く心を揺さぶられました。この作品に出会えて良かった…有難う御座います。これからも、心より応援しております…! (2020年5月31日 20時) (レス) id: cfd9b5973a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきのすけ(プロフ) - シリーズの一話を何の気なしに覗いてから、気付いたら狂ったようにこの作品だけを、求めて読んでいました。20年間生きてきて、占ツク以外でも沢山の本を読んで来ましたが、こんなにも引き込まれた物語は正直言って初めてです。 (2020年5月31日 20時) (レス) id: cfd9b5973a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きんにく | 作成日時:2020年5月17日 12時

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