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くらくら ページ10

「く、み…はがっ…」
苦しい。頭がふらふらする。
さっきから息つく間もなく舌を弄ばれ続けている。
だからと言って力を抜くとその度に舌を噛まれる。
おかしい。苦しいはずなのに、何か…
完全に嫌だとは言い切れない自分がいた。
なんか、体がおかしい…ほかほかして、ちょっと、気持ちがいいかもしれない…
「かしら…何…ん…」
やばい、溺れる、息をしたい。そう思って息を吸えば吸うほど、体のあつさが高まる…肺が熱で満たされる…
「落ち着いて…ん…息、吸って。」
そんなこと言われても…無理だ。肺が空気を欲している。落ち着いてなんていられない。
その時、ふと口を離されて痛いほどに息を吸い込んだ。
「っ、ゲホッ…」
盛大に咽せた。口の端を唾液が伝っていくのを感じた。
「はい、頑張ったね…よしよし…」
組頭は私の体を起こすと、抱き抱えるように座らせ、とんとんと背中をさすった。
丁度、子供の頃にぐずついてあやされた時のような優しい手つきに、組頭が何をしたいのか分からなくなる。
「な…に…」
気がつけば頭まで撫でられていて、急に子供のように甘えてしまいたい気持ちが押し寄せてきた。
「くみ…がしら…。」
いつもの組頭に戻った。その気持ちだけで、私は涙が堪えられなくなった。
組頭の肩に凭れ掛かり息を整える。
その間も組頭はずっと私を撫でるのを止めなかった。
「怖かったね…。」
「あ、なたが…っ、」
涙でうまく話せない私の姿は、余裕のある組頭からはどんなに滑稽に映っているだろうかと情けなくなる。
「そうだね。ごめんね。」
背中をとんとんとされて、段々気持ちが落ち着いていく。
「うぅ…。」
「意地悪してごめんね。」
「そ、なこという、なら、元から…」
「そうだよね。ごめん、意地悪したくなっちゃって。」
段々と頭が冴えてくる。
改めて、そういえば組頭は何に怒っていたんだろうと気になったが、なんだか聞く勇気が出なかった。
終わった途端に機嫌が良くなったのを見て、もしかしたら本当に、組頭の感情的になるスイッチをピンポイントで踏み込んだのかもしれないと感じたからだ。
いつも怒るなんてことをしない人だからこそ、そうなった時に底が知れない。
なんで、何がそんなに…それがいくら考えても分からなくて頭の中で堂々巡りしている。
「組頭の、ばか。」
やっと出た言葉はそんな子供っぽい不躾なものだった。
「ふっ、ははは!そうだね。ごめん。」
この人は、私を追い詰めておいて、またそうやってけらけらと笑うんだ。

お父さん→←箱入り



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Nagisa Honda(プロフ) - まろんさん» まろんさん、コメントありがとうございます。雑渡さん…良いですよね…思い返せば、私も多分初推しの座を奪われてました笑。これからも書きたいことを書き殴っていくので、もし好みが合いそうでしたらご覧いただけると嬉しいです。 (1月13日 0時) (レス) id: f3e20353fb (このIDを非表示/違反報告)
Nagisa Honda(プロフ) - 上衣さん» 上衣さん、コメントありがとうございます。実は私も映画で一気に組頭にハマりました…はちゃめちゃに強キャラでスマートでかっこいいですよね…! そんな組頭をちゃんと表現できているかかなり不安ですが、これからも気が向いた時に更新頑張ります! (1月13日 0時) (レス) id: f3e20353fb (このIDを非表示/違反報告)
まろん - こなもんさんは私の初恋泥棒なので見ててキュンとします!途中の作者様の気持ちにめちゃ共感しました! (1月11日 2時) (レス) id: 45a7f9af8d (このIDを非表示/違反報告)
上衣(プロフ) - 途中、作者様のお気持ち「雑渡さんのこう言う一面見てみたい」VS「雑多さんはこんなことしない」VSダークライに笑ってしまいましたw 確かに「雑渡さんはこんなことしない!でも、こんな一面をみてみたい!」と私もなります。続きをとても楽しみにしております。 (1月10日 20時) (レス) id: 474ffd7195 (このIDを非表示/違反報告)
上衣(プロフ) - 初めまして。去年、雑渡さんの存在を知り、今回の映画で沼にハマってしまった者です。終始、心の中で「キャーキャー」(赤面)しながら読ませていただきました。続く (1月10日 20時) (レス) @page11 id: 474ffd7195 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Nagisa Honda | 作成日時:2025年1月9日 11時

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