視線 ページ40
だめだ…どうしよう…昔の事を思い出して勢いで来たは良いものの、何を言えば良いのかさっぱりわからない…。
組頭はいつもとは違って正座をしているし、視線をわざと逸らされている。
皆んなのお陰で組頭からの好意に確信を持てたはずなのに、いざ改めて相対すると果たしてこの人が本当に私のことなどを好いているのかと疑問が生まれてしまう。
「今日はどうして来てくれたのかな。」
やっと掛けられた声も、どこかいつもと違って余所余所しい気がし、心臓に冷や水を浴びせられた気持ちになる。
「いや、その…それは…」
「…あの時の事、覚えていたんだね。」
あの時、と言うのは、彼が個人として私と向き合ってくれた時の事だろう。勿論、忘れられるはずはない。
「…はい…組頭も…。」
「…実は丁度、あの時のことを考えていてね。」
「そう、なんですか…。」
私との過去を思い出してくれていたと言う事実だけで、私は随分と救われた気持ちになった。
「あぁ。組頭ではなく、『昆奈門』自身の意思とはなんなんだろう、ってね。」
彼とやっと目が合った。安心したのも束の間、こちらを探るような視線に射抜かれ、つい固まってしまう。
「それは…」
「情け無い事だけど、私には、『私』が何なのかは分からなかったよ。」
組頭もそんな事で悩むのか、と、かなり意外に感じた。
「…それで、『君』は、どうなのかな。」
「…『私』、ですか…」
「あぁ、忍としての君とは別に、個人としての『君』はいると思うかい。」
「私は…いると、思います。」
「どんな所で違うんだい。」
正直、答えるのは怖い…組頭が望む答えと違かったら、忍として失望させてしまうのではないか、と怖かった。
しかしその時、頭の中で皆んなに言われたことが不思議と響いて来た…「ありのままの『貴女』で、向き合ってあげて」と。
「私は…、命を繋いでもらった身としてこの城に恩義を感じていますし、その分を忍としての任務で返していきたいと思っています。」
「それが、『忍』としての君かい。」
「そうです…でも、それと同じくらい…それを上回るくらい、この城の一人一人への感謝や愛情が大きいと思っています。」
「それが、『個人』としての君ってことかな。」
「はい…。」
「…なるほど。」
組頭はまた視線を下に戻した。彼が私の話をどう評価するのか、気が気ではなかった。
「そうだとしたら、」
ゆっくりと、彼の視線が、私の視線と交差した。
「君のその目に、『私』は映っているのかな。」
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Nagisa Honda(プロフ) - まろんさん» まろんさん、コメントありがとうございます。雑渡さん…良いですよね…思い返せば、私も多分初推しの座を奪われてました笑。これからも書きたいことを書き殴っていくので、もし好みが合いそうでしたらご覧いただけると嬉しいです。 (1月13日 0時) (
レス) id: f3e20353fb (このIDを非表示/違反報告)
Nagisa Honda(プロフ) - 上衣さん» 上衣さん、コメントありがとうございます。実は私も映画で一気に組頭にハマりました…はちゃめちゃに強キャラでスマートでかっこいいですよね…！ そんな組頭をちゃんと表現できているかかなり不安ですが、これからも気が向いた時に更新頑張ります！ (1月13日 0時) (レス) id: f3e20353fb (このIDを非表示/違反報告)
まろん - こなもんさんは私の初恋泥棒なので見ててキュンとします！途中の作者様の気持ちにめちゃ共感しました！ (1月11日 2時) (レス) id: 45a7f9af8d (このIDを非表示/違反報告)
上衣(プロフ) - 途中、作者様のお気持ち「雑渡さんのこう言う一面見てみたい」VS「雑多さんはこんなことしない」VSダークライに笑ってしまいましたw 確かに「雑渡さんはこんなことしない！でも、こんな一面をみてみたい！」と私もなります。続きをとても楽しみにしております。 (1月10日 20時) (レス) id: 474ffd7195 (このIDを非表示/違反報告)
上衣(プロフ) - 初めまして。去年、雑渡さんの存在を知り、今回の映画で沼にハマってしまった者です。終始、心の中で「キャーキャー」(赤面)しながら読ませていただきました。続く (1月10日 20時) (レス) @page11 id: 474ffd7195 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Nagisa Honda | 作成日時：2025年1月9日 11時
