議事録 ページ35
「議事録です。お納めください。」
「ありがとう」
彼女は荷物を片付けるとすぐに部屋を出ようとする。
「…A」
「はい?」
彼女の目を見て感じた。立派に忍をしている時の顔だ、と。
そんな時に私情を挟んだ話をするほど、私も落ちてない。
「今回の任務は隼隊と黒鷲隊が要だ。調査と報告をしっかりするように。」
「承知しました。」
それから1日もすれば、両隊から報告が上がってきた。
隼隊からは「街道を監視したが、鉄らしき物資のやり取りは活発ではない」との報告が、
黒鷲隊からは「城下町は食糧不足にあえぎ、農村ですら食糧が不足している」と報告があった。
「…やはり、不作による食糧難か。」
「と言うことは戦ではない…んですよね?」
隼隊の隊長が、恐る恐る声を上げた。
「…恐らくね。これで喫緊の恐れは無くなったと言っていいだろう。」
その場にいた者達から安堵の声が漏れる。
議事録を作っているAも、つい顔をあげ安心した顔を見せた。
「ただし、油断は禁物だ。なぜこれほどの不作が今まで表に出なかったのか…それに、なぜ急にチャミダレの領地だけ不作なのか…調べる必要があるね。」
「となると…隼隊は水源と土壌の調査に移行します。」
「黒鷲隊は、引き続き城下町で聞き取りを。」
「よろしく頼むよ。」
今日の幹部会議の議事録を見ながら、次の作戦書を作っている。
戦の恐れはなくなった。しかしその理由には別の危険が隠れているかもしれない。
油断は禁物、に越したことはないが、警戒のしすぎでは軍内の磨耗が激しい。
…正直、この立場は考える事が多い。
戦略的にも人材的にも常に正解を出し続けなければ、いつかどこかでその綻びが大きな穴となって足を取られる。
「…はぁ…」
最近は他のことでも皆に心配をかけている。特にAのこととなると幹部は皆、父親のような存在だ。影響力も大きい。あまり長引けば…あるいは皆が納得のいく形にならなければ、間接的にではあるが士気の低下につながる。
「…早いところ、どうかしないとね…」
ふと目を落とした議事録が気になった。
字が綺麗だ。流れるような線ながら、しっかりと緩急がつき、読みやすい。
しかも内容も、ただのそのままの書き写しではなく、要約をされながらも、しかし、ちゃんと重要な点を押さえている。
やはり書類仕事に向く頭の使い方ができるんだろう。
将来的には隼隊の頭に据えればうまいこと行くかもしれないと、彼女には期待している。

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Nagisa Honda(プロフ) - まろんさん» まろんさん、コメントありがとうございます。雑渡さん…良いですよね…思い返せば、私も多分初推しの座を奪われてました笑。これからも書きたいことを書き殴っていくので、もし好みが合いそうでしたらご覧いただけると嬉しいです。 (1月13日 0時) (レス) id: f3e20353fb (このIDを非表示/違反報告)
Nagisa Honda(プロフ) - 上衣さん» 上衣さん、コメントありがとうございます。実は私も映画で一気に組頭にハマりました…はちゃめちゃに強キャラでスマートでかっこいいですよね…! そんな組頭をちゃんと表現できているかかなり不安ですが、これからも気が向いた時に更新頑張ります! (1月13日 0時) (レス) id: f3e20353fb (このIDを非表示/違反報告)
まろん - こなもんさんは私の初恋泥棒なので見ててキュンとします!途中の作者様の気持ちにめちゃ共感しました! (1月11日 2時) (レス) id: 45a7f9af8d (このIDを非表示/違反報告)
上衣(プロフ) - 途中、作者様のお気持ち「雑渡さんのこう言う一面見てみたい」VS「雑多さんはこんなことしない」VSダークライに笑ってしまいましたw 確かに「雑渡さんはこんなことしない!でも、こんな一面をみてみたい!」と私もなります。続きをとても楽しみにしております。 (1月10日 20時) (レス) id: 474ffd7195 (このIDを非表示/違反報告)
上衣(プロフ) - 初めまして。去年、雑渡さんの存在を知り、今回の映画で沼にハマってしまった者です。終始、心の中で「キャーキャー」(赤面)しながら読ませていただきました。続く (1月10日 20時) (レス) @page11 id: 474ffd7195 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nagisa Honda | 作成日時:2025年1月9日 11時