悪夢 ページ28
「組頭っ!」
まだ辺りは暗い。
「…夢、か…」
たまに思い出したように見る悪夢がある。
まだ10才だった私は、いつものように任務に行く父と昆奈門さんを城門で見送った。
その日の夜中だった。
彼らの潜伏先で火事があったと一報が入った。
「陣内さん!」
「お前は部屋で待っていなさい!」
身支度を整える陣内さんに必死で連れて行ってほしいと懇願したが、まだ子供だからと聞く耳を持ってもらえなかった。
それからは三日三晩、寝ずに過ごした。
いつ2人が帰ってくるかという気持ちで何度も吐いてしまったし、食事は喉を通らなかった。
「尊奈門…」
「…なんだ、A…ちょっと今は…」
「…泣いてたって、結果は変わらないよ。」
Aは、2人のことが心配でぼろぼろな私に、そう言った。その時は「何でそんなことを言うんだ」という怒りだけが沸き起こってきた。
だから僕は、あいつを打ってしまった。
「2人が死んでもいいのかよ!お前は!小頭に何の恩も感じてないのか?!」
「…いいわけないよ…」
打たれた頰すら全く気にする素振りも見せず、彼女は私をじっと見つめた。
「でも、人は死ぬ時は死ぬんだよ。」
そう言った目は、寂しそうな、でも何かを諦めたような顔をしてた。
「はぁ…」
胃が痛い…この夢を見るといつもそのあとは眠れなくなる。
「…尊奈門、大丈夫か?」
廊下側の戸の方から声が聞こえる。
「…陣左…先輩…」
「その呼び方やめろって言ってるだろ?」
そう呼んでいいのは組頭だけだ!と、奴は謎に胸を張った。
「…また、あの時の夢か?」
「……まぁ、そうだ…。本当、情けないよな。」
こいつには何でも知られているから、今更恥じる事なんて無いはずなのに、自分の不甲斐なさが嫌になる。
「情けないなんて、そんなこと言うな…あの方を必死に介護したのはお前だろ?」
「そう、だけど…」
「…またしょーもないこと考えてるんだろ。」
「…だって…。」
「あのなぁ、前も言ったけど、『もしもあの時』とか言うなよ。はっ倒すからな。」
そう、こいつには過去何度もあの事で本当にはっ倒されている。
「僕がもう少し大人なら。」「あの時2人について行ければ。」「あの時2人を止めていたら。」なんて言った時には、「あの2人がどうにもできなかったことをお前がどうにかできると思うなアホ!」と怒鳴られた…。
でも正直、こいつが怒ってくれないと、僕はずっとあのどん底の中で生きていたと思う。
「ありがとうな、陣左」
「…だからそれやめろって」

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Nagisa Honda(プロフ) - まろんさん» まろんさん、コメントありがとうございます。雑渡さん…良いですよね…思い返せば、私も多分初推しの座を奪われてました笑。これからも書きたいことを書き殴っていくので、もし好みが合いそうでしたらご覧いただけると嬉しいです。 (1月13日 0時) (レス) id: f3e20353fb (このIDを非表示/違反報告)
Nagisa Honda(プロフ) - 上衣さん» 上衣さん、コメントありがとうございます。実は私も映画で一気に組頭にハマりました…はちゃめちゃに強キャラでスマートでかっこいいですよね…! そんな組頭をちゃんと表現できているかかなり不安ですが、これからも気が向いた時に更新頑張ります! (1月13日 0時) (レス) id: f3e20353fb (このIDを非表示/違反報告)
まろん - こなもんさんは私の初恋泥棒なので見ててキュンとします!途中の作者様の気持ちにめちゃ共感しました! (1月11日 2時) (レス) id: 45a7f9af8d (このIDを非表示/違反報告)
上衣(プロフ) - 途中、作者様のお気持ち「雑渡さんのこう言う一面見てみたい」VS「雑多さんはこんなことしない」VSダークライに笑ってしまいましたw 確かに「雑渡さんはこんなことしない!でも、こんな一面をみてみたい!」と私もなります。続きをとても楽しみにしております。 (1月10日 20時) (レス) id: 474ffd7195 (このIDを非表示/違反報告)
上衣(プロフ) - 初めまして。去年、雑渡さんの存在を知り、今回の映画で沼にハマってしまった者です。終始、心の中で「キャーキャー」(赤面)しながら読ませていただきました。続く (1月10日 20時) (レス) @page11 id: 474ffd7195 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nagisa Honda | 作成日時:2025年1月9日 11時