奪取 ページ20
「だから、夫婦になろうよ。」
そう言った時の彼女の反応は、思ったよりかなりあっさりしていた。
一度目を見開いたが、反応はそれだけ。
次の瞬間には「組頭…そう言うことは軽々しく言うものでは」と、明らかな拒絶をされた。
「うん。だからさ。好きだから、そう言うの嫌だから、結婚しようよ。」
「組頭…。」
「なに。」
「私…嫌、です…そういうの…。」
なんで、断ってる君の方が泣きそうになってるんだろう。
私の何がそんなにいけないんだろう。
やはりこんな身体だからだろうか。
それとも、やっぱり尊奈門に好意があるんだろうか。
「組頭…私達はもう、とっくに『家族』じゃないですか。」
なんでそんなに辛そうな声なんだろう。
彼女のことが分からなくて、全てが上滑りしてしまう。
あ、これ、だめだ、と確信した時には、彼女は既に泣いていた。
「A…。」
こんなに他人への対応に困るのはこれが初めてだ。
いつもだったら相手が泣き崩れたって、強く迫ればそのうち解決される。
でも君相手だと話は別だ。涙なんて流してほしくない。
「…で、組頭から手紙を奪って、ここまで走ってきたと。」
無言で頷くAは、目を泣き腫らしてこちらを見ている。
こいつのどこにそんな力があるのか…それとも組頭がよっぽど手加減していたのか…まぁ恐らく後者だが。
「尊奈門…私、最近、組頭のことが分からないんだけど。」
「いやそんなこと俺に言われても…」
「だって…私達はさ…この城は、もうとっくにみんな家族なのに、なんで…それを今更変えないといけないんだろう。」
なるほど、これは思った以上にこんがらがっている。
正直最初、組頭にこの子を「取られた」と思った時はかなり複雑な心境だったが、その実、組頭は全く持って彼女の心を理解していない。むしろ応援したくなるくらいには、全くもって関係が進んでいないんだから、笑える…組頭、貴方もだめな所、あったんですね。
「尊奈門はさ、今の私達、そんなにだめだと思う?」
「ダメってことはないだろ。みんな仲良くやっているし、お互いを思いやってるし。やっぱり今まで一緒に生きてきた縁は、そうそう切れないよ。」
「じゃあ…なんで組頭は、あんなことするんだろう…私、もうこれ以上なんて望んでないのに…みんながいてくれれば、私はそれで十分なのに。夫婦にならないといけない理由って、なんだろう」
なるほど、Aは、組頭が今までの関係性を蔑ろにしていると感じて、それを嫌がっているらしい。

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Nagisa Honda(プロフ) - まろんさん» まろんさん、コメントありがとうございます。雑渡さん…良いですよね…思い返せば、私も多分初推しの座を奪われてました笑。これからも書きたいことを書き殴っていくので、もし好みが合いそうでしたらご覧いただけると嬉しいです。 (1月13日 0時) (レス) id: f3e20353fb (このIDを非表示/違反報告)
Nagisa Honda(プロフ) - 上衣さん» 上衣さん、コメントありがとうございます。実は私も映画で一気に組頭にハマりました…はちゃめちゃに強キャラでスマートでかっこいいですよね…! そんな組頭をちゃんと表現できているかかなり不安ですが、これからも気が向いた時に更新頑張ります! (1月13日 0時) (レス) id: f3e20353fb (このIDを非表示/違反報告)
まろん - こなもんさんは私の初恋泥棒なので見ててキュンとします!途中の作者様の気持ちにめちゃ共感しました! (1月11日 2時) (レス) id: 45a7f9af8d (このIDを非表示/違反報告)
上衣(プロフ) - 途中、作者様のお気持ち「雑渡さんのこう言う一面見てみたい」VS「雑多さんはこんなことしない」VSダークライに笑ってしまいましたw 確かに「雑渡さんはこんなことしない!でも、こんな一面をみてみたい!」と私もなります。続きをとても楽しみにしております。 (1月10日 20時) (レス) id: 474ffd7195 (このIDを非表示/違反報告)
上衣(プロフ) - 初めまして。去年、雑渡さんの存在を知り、今回の映画で沼にハマってしまった者です。終始、心の中で「キャーキャー」(赤面)しながら読ませていただきました。続く (1月10日 20時) (レス) @page11 id: 474ffd7195 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nagisa Honda | 作成日時:2025年1月9日 11時