手紙 ページ19
「陣内さん。」
「お、A、久しぶりだな。」
最近、色々と(特に組頭が)変なので、いつも通りの陣内さんを見るだけでかなり心が救われる…流石、タソガレドキのお父さんだ。
「あの…尊奈門は、元気にやってますか。」
「…あぁ、今日も演練に励んでるよ。」
陣内さんはいつも通りに笑っているが、その一瞬の間で、「あぁ、いつも通りでは無いんだな」と感じた。
正直言うと、組頭があんな感じになってから、尊奈門が私を避けている気がする。
正直、気まずいのだろうと思う。
2人して父のように慕ってきた組頭と私が、まさかこんな関係になるなんて、私も尊奈門も全く予想していなかったのだから。
そりゃあ、兄弟と育て親が…となれば心安らかではいられないだろう。
「あの、これ、できれば尊奈門に。」
私は懐から文を取り出し、陣内さんに渡した。
「しかと受け取った。必ず渡すよ。」
「ありがとうございます。」
…で、その結果が今のこれだ。
この前の部屋で、この前と同じように組頭に見下ろされている。
「私もこんなに嫌われてると思わなかったよ。」
そう言う組頭の手には先程の文が握られている。
はぁー、と、深いため息を吐かれる。
「ねぇ…結婚、しようよ。」
「…はい?」
だめだ、組頭の怒りと言動が私の中で全く噛み合わない。
「私は君の事が好きだから、夫婦になろうって、言ってるんだけど。」
そう言ってはいるものの、眉間には皺が寄り、明らかな怒りを表していた。
とうとう表情を繕うのもやめたのか、と、少し寂しい気持ちになる…いや、寂しいってなんだ…任務なんだから当たり前だろう、と自分の気持ちを掻き消した。
「ねぇ…聞いてる?」
「はい…。」
「だから、夫婦になろうよ。」
「…組頭…そう言うことは軽々しく言うものでは…」
「どうしたら信じてもらえるのかな。」
…この人、『結婚』の意味、知ってるのかな。
「子を残すだけなら、夫婦なんかにならなくても。」
「それじゃ嫌だって言ってるんだけど。」
じと、と見つめられ、ついついたじろいでしまう。
殿のご意向に変化があったと言うことなのだろうか。
大男に組み敷かれるなんて明らかに恐怖を感じる状況なのに、組頭が少し幼く感じられて不思議と恐ろしさは無い。
「何で私が怒ってるか、分かってる?」
「尊奈門に手紙を送ったから…?」
「うん。だからさ。好きだから、そう言うの嫌だから、結婚しようよ。」
その堂々巡りの会話に、私は心の中で頭を抱えた。

104人がお気に入り

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Nagisa Honda(プロフ) - まろんさん» まろんさん、コメントありがとうございます。雑渡さん…良いですよね…思い返せば、私も多分初推しの座を奪われてました笑。これからも書きたいことを書き殴っていくので、もし好みが合いそうでしたらご覧いただけると嬉しいです。 (1月13日 0時) (レス) id: f3e20353fb (このIDを非表示/違反報告)
Nagisa Honda(プロフ) - 上衣さん» 上衣さん、コメントありがとうございます。実は私も映画で一気に組頭にハマりました…はちゃめちゃに強キャラでスマートでかっこいいですよね…! そんな組頭をちゃんと表現できているかかなり不安ですが、これからも気が向いた時に更新頑張ります! (1月13日 0時) (レス) id: f3e20353fb (このIDを非表示/違反報告)
まろん - こなもんさんは私の初恋泥棒なので見ててキュンとします!途中の作者様の気持ちにめちゃ共感しました! (1月11日 2時) (レス) id: 45a7f9af8d (このIDを非表示/違反報告)
上衣(プロフ) - 途中、作者様のお気持ち「雑渡さんのこう言う一面見てみたい」VS「雑多さんはこんなことしない」VSダークライに笑ってしまいましたw 確かに「雑渡さんはこんなことしない!でも、こんな一面をみてみたい!」と私もなります。続きをとても楽しみにしております。 (1月10日 20時) (レス) id: 474ffd7195 (このIDを非表示/違反報告)
上衣(プロフ) - 初めまして。去年、雑渡さんの存在を知り、今回の映画で沼にハマってしまった者です。終始、心の中で「キャーキャー」(赤面)しながら読ませていただきました。続く (1月10日 20時) (レス) @page11 id: 474ffd7195 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Nagisa Honda | 作成日時:2025年1月9日 11時