【忍たま】隼隊の紅一点【雑渡昆奈門】

ずるい ページ12

「尊奈門。飲み行こう。」
演練後、いつもは泥だらけで汚いとか言ってくる小頭がそう言って肩を組んできた。
「いいですけど…。」
なんか、面倒臭い予感。

「ほんとにお頭は！ずるい！」
結局、酒が入るとすぐに愚痴モードで手がつけられなくなった。ずっと「雑渡は」「お頭は」と、組頭の愚痴ばかりだ。しかも肝心な事は一切話さない。
「本当に…何があったんですか？」
「…いんや、なんでも…ただ、こう、あれだ、長く一緒にいると、こういう事もあるだろう。」
何かがおかしい。最高に酔っ払っているように見えて、大事なことはきちんと伏せている。実はそんなに酔ってないのではと疑うくらいには。
「まぁ確かに組頭は、ズルいですよ、正直。」
ツラ良し、体良し、声も良し、強く逞しくそれでいて聡明。常に余裕がある立ち振る舞いで、無駄がない。正直、漢としては永遠に敵わないと思っている。
「でもだからいいんじゃないですか？なんか、こう、『この人にならついていきたい！』って思えるというか。」
「お前も大概、盲目だな。恋でもしてるのか？」
恋、か。まぁ、そうかもしれないな。
「だがよ、お前だってその内、本気で嫉妬すると思うぜ。」
「いやいや、あの方に嫉妬だなんて、畏れ多い。」
「だがなぁ、女の事になると、どうだかなぁ。」
「…はい？」
女、つまり僕が好きな人を取られるとかそういう…？？？
え、てか待って、もしかして、色々バレてる？？？
いやいや、奴とは兄妹みたいなもんでそんな好きとかじゃ…！！！
いやでも…組頭とも俺とも関係のある女性って…？？？
「つまり、その、なんだ…まぁそのうちわかるさ。」
明らかにはぐらかしてるぞ、この人。
だがここでAのことを持ち出したらそれこそ「気があります」って白状したようなものだ。そればかりはいくら何でも恥の上塗りだ。
「組頭…何を仰ってるか分かりませんが、この私が女性に現を抜かすなど…」
「抜かしきってるだろ。青二歳が。この前だってあいつが倒れたって言った時、真っ先に来ただろう。」
「ぎくっ…いやあれは妹として心配で…。」
「…そろそろ本当に何も隠せてないから諦めろ。そして組頭に取られても諦めろ。」
「…いやいやいやいや、組頭がAをとか、本気で言ってるんですか？！まさか！だって父みたいなもんじゃないですか！」
「…そこまで気付いてないの、正直お前だけだと思うけどなぁ。」
「え？！」
なにが、どう？え、マジで何が起きてるのか説明して下さい小頭！

めんどくさい→←お父さん

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す