お父さん ページ11
「組頭。」
「なに?」
「分かっているでしょう?」
ず、と顔を近づけて凄まれる。さすが曲者ばかりを束ねる隼隊隊長。圧がなかなかにある。
「何のことかな。」
「はぁ…Aのことですよ。」
「彼女がどうかした?」
ぎ、と睨まれる。こわいこわい。諜報要員なのになかなかどうして血の気が多いんだから。
「分かっているでしょう。先週貴方に連れられてから、どうも様子がおかしい。倒れて帰ってきたと思ったら、ぼーっとして任務も手につかない様子で。」
「風邪でも引いたかな。」
「…ちゃんと話して下さい。必要なら支援に周りますから。」
さすが、仕事ができる男は話が早い。
「いいよ。任務室、いこっか。」
そうしてこの前なんだかんだあった書庫にまた足を運んだ。
あの時かわいかったな、なんて考えて、ちょっと興奮しちゃった。小頭はそんなこと知る由もないっていうのがまた、『スリルとサスペンス』だよね。
「で、何があったんですか。」
「…彼女を嫁に取ることにしたよ…。」
「……嫁?!」
「かくかくしかじかでね。殿のご意向だよ。」
まぁ彼女にはまだ言ってないけど。
見れば小頭はポカンとした顔をしている。
無理もない。彼とは前からちょくちょく『どっちが彼女の父たるか』なんて議論をしていたんだから。
だって、なんか彼女、すごく庇護欲を掻き立ててくるじゃん。
「く、組頭…。」
何度か口を噤み、考え抜いた末に彼が口を開いた。
「なに?」
「幸せに、してあげてください。」
肩をガシッと掴まれ、悟りを開いたような顔で微笑まれた。
「つっこまないんだ。」
「ごめんなさい、いくら突っ込んでも足りないので、諦めました。」
あ、これ、本当に諦めた顔だ。数十年を共にしてくればわかる。
彼も大概、彼女のことになると情緒不安定だ…まぁ、私よりもずっとそばにいるもんね。隼隊ずるくない?役得すぎない?
「これからは私のものになるんだと思うと、感慨深いよ。」
「組頭…彼女はものではありませんよ。あぁ見えて意外と芯があるんです。」
「分かってるよ。彼女の城への忠誠は絶対だ。」
それこそ、小さい時からずっと恩を売られているのだから、軽く洗脳だよね。妬いちゃうくらい一途なんだよ。
「それにしても…」
すっと顔を上げた彼の顔は、コロっと上機嫌に戻っていた。
「いやー、組頭が貰ってくださるなら安心安心。これで嫁ぎ先で胃を痛めることもなくなる。」
「ほんとに諦めてるね。」
「だって…父親が娘を娶るとか…軽く犯罪ですよ。」

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Nagisa Honda(プロフ) - まろんさん» まろんさん、コメントありがとうございます。雑渡さん…良いですよね…思い返せば、私も多分初推しの座を奪われてました笑。これからも書きたいことを書き殴っていくので、もし好みが合いそうでしたらご覧いただけると嬉しいです。 (1月13日 0時) (レス) id: f3e20353fb (このIDを非表示/違反報告)
Nagisa Honda(プロフ) - 上衣さん» 上衣さん、コメントありがとうございます。実は私も映画で一気に組頭にハマりました…はちゃめちゃに強キャラでスマートでかっこいいですよね…! そんな組頭をちゃんと表現できているかかなり不安ですが、これからも気が向いた時に更新頑張ります! (1月13日 0時) (レス) id: f3e20353fb (このIDを非表示/違反報告)
まろん - こなもんさんは私の初恋泥棒なので見ててキュンとします!途中の作者様の気持ちにめちゃ共感しました! (1月11日 2時) (レス) id: 45a7f9af8d (このIDを非表示/違反報告)
上衣(プロフ) - 途中、作者様のお気持ち「雑渡さんのこう言う一面見てみたい」VS「雑多さんはこんなことしない」VSダークライに笑ってしまいましたw 確かに「雑渡さんはこんなことしない!でも、こんな一面をみてみたい!」と私もなります。続きをとても楽しみにしております。 (1月10日 20時) (レス) id: 474ffd7195 (このIDを非表示/違反報告)
上衣(プロフ) - 初めまして。去年、雑渡さんの存在を知り、今回の映画で沼にハマってしまった者です。終始、心の中で「キャーキャー」(赤面)しながら読ませていただきました。続く (1月10日 20時) (レス) @page11 id: 474ffd7195 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nagisa Honda | 作成日時:2025年1月9日 11時