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命の恩人 ページ2

組頭について歩いて行く。
城に住んでいるとは言っても、私は普段隼隊の管轄区と食堂と居室くらいしか行き来しないため、正直城主のところなんて行く機会はそうそうない。
こうしているうちに周りには南蛮趣味の装飾が徐々に増えていき、城主の趣向を感じられるようになってきた。
「そういえば、久しぶりだね、A」
急に歩みを止め、振り向いた組頭がそう言う
「少し前までは子守をさせられていたのに、いつのまにか忍になっているなんてな。」
そう、畏れ多くはあるが、この方もまた私の恩人である。
何しろ、戦で傷つき身の危険を感じた父が連れてきた私を、城に匿ってもいいのではないかと言ったのがこのお方だ。
周りの人は、どこの城にもついていない忍者の子供を匿う危険性から私を閉め出そうとしたが、教育をしてタソガレドキの忍者にすれば良いと説得したのが雑渡さんなのだ。
つまり、この方がいなければ、私は恐らくあの戦で父と共に殺されていたのだから、その恩は計り知れない。
「組頭…そんな昔のこと」
「昔は『こなちゃん』って呼んでくれてたのになぁ」
「ぐ…!何歳の時の話してるんですか?!」
人の恥ずかしい過去を曝け出しておいて、本人は飄々としている。
と言うより、絶対にニヤニヤしている。あまり表情は見えないが、声音はどこか楽しそうだし、目元も少しばかり緩んでいる。
「あーあ、昔は『組頭のこと大好きです』って言ってくれたのになー」
心臓が跳ねる…だってその頃の私の「好き」は、紛うことなき初恋でもあったのだから。
小さい女の子が、最初に知った大人の男性を好きになるなんて…よくある話だ。よくある話すぎて恥ずかしい。
ひとつまだ救いなのは、その頃の私は勿論「告白」なんて事を知る筈はなく、正面切って「あなたのことを恋愛対象として好きです」などとは言っていない事だ。
「 貴方には感謝しています。私の命を救ってくれたのは貴方ですから。」
「そう?なら良いけど」
また歩き出した後も、私はなんだかドキドキしてしまっていた。だって「貴方が初恋の相手で、実のところ今もかっこいいなって思ってる」なんて、絶対に悟られたくないから。
「あのさ。」
「はい。」
「今回の任務は…嫌なら断る事もできるから…」
「…断る?」
組頭ともあろう方が何を
「私はこう見えてもタソガレドキ忍者の端くれです」
私を助けてくれた城を守り、死ねと言われれば死ぬ覚悟くらい、昔からできている。それを軽く見られた気がして私は少しむっとした。

そんなもん→←隼隊



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Nagisa Honda(プロフ) - まろんさん» まろんさん、コメントありがとうございます。雑渡さん…良いですよね…思い返せば、私も多分初推しの座を奪われてました笑。これからも書きたいことを書き殴っていくので、もし好みが合いそうでしたらご覧いただけると嬉しいです。 (1月13日 0時) (レス) id: f3e20353fb (このIDを非表示/違反報告)
Nagisa Honda(プロフ) - 上衣さん» 上衣さん、コメントありがとうございます。実は私も映画で一気に組頭にハマりました…はちゃめちゃに強キャラでスマートでかっこいいですよね…! そんな組頭をちゃんと表現できているかかなり不安ですが、これからも気が向いた時に更新頑張ります! (1月13日 0時) (レス) id: f3e20353fb (このIDを非表示/違反報告)
まろん - こなもんさんは私の初恋泥棒なので見ててキュンとします!途中の作者様の気持ちにめちゃ共感しました! (1月11日 2時) (レス) id: 45a7f9af8d (このIDを非表示/違反報告)
上衣(プロフ) - 途中、作者様のお気持ち「雑渡さんのこう言う一面見てみたい」VS「雑多さんはこんなことしない」VSダークライに笑ってしまいましたw 確かに「雑渡さんはこんなことしない!でも、こんな一面をみてみたい!」と私もなります。続きをとても楽しみにしております。 (1月10日 20時) (レス) id: 474ffd7195 (このIDを非表示/違反報告)
上衣(プロフ) - 初めまして。去年、雑渡さんの存在を知り、今回の映画で沼にハマってしまった者です。終始、心の中で「キャーキャー」(赤面)しながら読ませていただきました。続く (1月10日 20時) (レス) @page11 id: 474ffd7195 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Nagisa Honda | 作成日時:2025年1月9日 11時

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