＊317話「二人の憧れ」向日side ページ49
「“天才”なら練習しなくてもいいのか？
それでも、強いってか？ んなわけないだろ？」
どんな人間も練習しなくちゃ進めない。強くなれない。
練習もしないで強いままでいることなどできない。足元を掬われる。
だからこそ、“練習”をする。
「ま、そこそこはしてるみたいだが」
「っ？！」
「結局“そこそこ”でしかない」
人にみあったトスはあげている。
だが、そいつにとっての“打ちやすさ”を考えてはない。
どんなに、こいつが良いトスをあげたと思っても
「スパイカーが打ちやすいと思う以上に最高のトスはないんだよ」
「......」
下を向き、両手を握りしめる早乙女。
その頭をポン、と撫でてやる。
驚いて顔をあげた彼女に苦笑してやる。
「お前の“憧れ”はそれを第一にやっていたよ」
「なっ......んで」
「いや、見ればわかるよー？ Aと似てたし」
「え゛......」
慌てて口を押さえるA。
頑なにこちらを見ないようにする。
嫌そうな声だったなあ。
こいつも嫌そうな顔してるけど......。
眉間に皺をこれでもかというくらい寄せる早乙女。
きっと、Aも彼女も“憧れ”は同じなのだろう。
同じゆえに交えなかった......。
方や“憧れ”を奪ったもの。
方や“憧れ”を奪われたもの。
ぐしゃぐしゃと頭をなでまわす。
「それよりお前は言うことあるんじゃねえの？」
「え......」
「お前のせいで“練習時間”が削られてるんだよ」
「っ！！」
ぐっと屈んで目を合わせる。
そらすことも許さず、彼女の瞳をとらえる。
私情でここにいる連中に迷惑をかけている。
全く関係のない連中に迷惑をかけている。
ここで観戦している間に、他のやつらは練習をしている。
どこも変わらない。
それは中学も高校も変わらない。
「自分の事情で人様を巻き込むんじゃねえ」
「......」
「まだやりたりないなら、場所変えて相手してやるよ。
今度は私も混ざってな。ちょうど一人バテてるみたいだし」
「こっちみないでください」
居心地悪そうに、顔を背けて
やや結良に隠れるAに苦笑する。
早乙女は悔しそうに体を震わせていたが、
やっと“受け入れられた”のか、体の強張りが解けたのがわかった。
そして、か細い。
文字通り蚊が鳴くような声で言った。
「すみま、せんでした......」
＊318話「甘いな！！」→←＊316話「“負け”の現実」向日side
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星蛍(プロフ) - 美玲さん» ありがとうございます！ (2020年1月6日 11時) (
レス) id: 3b9001af19 (このIDを非表示/違反報告)
美玲(プロフ) - いえいえ！更新頑張ってください！ (2020年1月6日 5時) (レス) id: 405180babc (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - 美玲さん» 代わりにありがとうございました！ (2020年1月5日 21時) (レス) id: 3b9001af19 (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - 沙綾さん» 返信遅れてすみません！！美玲さんの言うとおり、縁下くんです！ (2020年1月5日 21時) (レス) id: 3b9001af19 (このIDを非表示/違反報告)
美玲(プロフ) - 沙綾さん、多分それ縁下力くんの事だと思います！もし違ってたらすみません(><) (2019年11月30日 17時) (レス) id: 405180babc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星蛍 | 作成日時：2016年2月28日 20時
