＊297話「同情する」 ページ29
第二セットも終盤。
調子をあげるこちらに比例して、
向こうはどんどん不調へ転んでいく。
それにつれてコートに、
体育館に響く、早乙女の怒号。
「雰囲気わるっ」
「......なんやかんやお人好しだよね」
「なっ？！」
んなことないわ！！ と顔を赤くする結良。
意外とこの人は他人に優しい。
自分の心、というか感情に素直。
今も違うと否定しながらも、
ネットの向こうを見ては心配そうにしている。
まあ、人のことは言えない......か。
チラリと目だけで向こう側を観察する。
疲れたような顔。
怯えたような顔。
不服そうな顔。
不満そうな顔。
“何か”を押さえている顔。
それはつい二年前の“私たち”と同じ顔だった。
楽しくなくて、
笑うこともできなくて、
ただただ、彼女の“駒”として“おもちゃ”として動かされていた。
うん。嫌だよね。
わかるよ。
目を伏せて、自陣を見れば、
全員、穏やかな表情。
でも、その目は同情的だった......。
わかるんだよ、私たち。
私たちもそうだったから......。
ふう、と息をひとつ吐き、全員に指示する。
でも、これはこれ。
負けていい理由にはならない......。
ピッ、とホイッスルが鳴った。
彩愛のジャンフロが“良いところ”に放たれる。
乱れるレシーブに、早乙女が「下手くそっ！！」と叫ぶ。
“雑な”トス、“余分なものが入った”トスがあがる。
“あの子”にあがる。
早い攻撃。
乱れたレシーブに対して強気な速攻。
普通はエースにあげるところ。
意表のついた攻撃。
それに対しては素直に流石だな、と心の中で賞賛する。
だが......。
「っ？！」
「シャアッ！！」
ドッ、という音ともに向こうへ落ちるボール。
早乙女の目が大きく見開かれた......。
「は？」
「もう少し“視線”抑えたら？」
現実を飲み込めない彼女に、ちょっとした一言を告げる。
たった一言。されど一言。
顔は呆けながら、手は震えている彼女に微笑む。
第二セット、25対15。
彼女に“一抹の屈辱”を与え、私たちがとった。
＊298話「答え合わせ」→←＊296話「変わらない大切なもの」漆原side
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星蛍(プロフ) - 美玲さん» ありがとうございます！ (2020年1月6日 11時) (
レス) id: 3b9001af19 (このIDを非表示/違反報告)
美玲(プロフ) - いえいえ！更新頑張ってください！ (2020年1月6日 5時) (レス) id: 405180babc (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - 美玲さん» 代わりにありがとうございました！ (2020年1月5日 21時) (レス) id: 3b9001af19 (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - 沙綾さん» 返信遅れてすみません！！美玲さんの言うとおり、縁下くんです！ (2020年1月5日 21時) (レス) id: 3b9001af19 (このIDを非表示/違反報告)
美玲(プロフ) - 沙綾さん、多分それ縁下力くんの事だと思います！もし違ってたらすみません(><) (2019年11月30日 17時) (レス) id: 405180babc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星蛍 | 作成日時：2016年2月28日 20時
