太陽の当たる場所 9

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自分の天邪鬼な性格が
残念で仕方ない。

『高嗣』って呼ぶのも
もういいよ、って言われたら
呼ぼうって思えて
いざ呼んだら嬉しそうなニカを見て
やっぱり呼べなくなる。



「Aー」

「なに？」

「ね、もっかい呼んで？『高嗣』って」

「いーやーだー」



食器を洗いながらずーーっとニカはお願いし続けてて。
私はまだ呼べずにいる。

ものすごく照れる。
ただ名前で呼んだだけなのに。



「じゃあさ、A」

いつもより甘い声で呼んでくるニカは

「呼べる時だけでいいから呼んで？」

ニコッて笑う。



……この笑顔には弱いけど。

呼べないものは呼べない。



けど

「分かったよ、……高嗣」

すごく頑張って言ってみる。



ニカはものすごく嬉しそうな顔をして

「………ヤバ、嬉しっ」

キッチンを片付ける手を止めて横から抱き締めてくる。



そんなに『高嗣』って呼ばれかたったんだ。
知らなかった。

「高嗣って呼ぶ方が良かったの？」

「ん？…あー、まぁどっちでもいいんだけど」

すごく嬉しそうだった割に
本当に興味無さそうな雰囲気だからすごく頑張って呼んだこっちが拍子抜けする。



「いいんかいっ」

「Aが呼んでくれるならどっちでもいーけど、さっきも言ったけどAも『ニカ』になる時おかしくない？って思っただけ」




またサラッと言われて
ニカにとってはそんな将来が当たり前な事が嬉しくて。

ドキドキしてニカの方を見れない。



黙って下を向く私に

「…ちょっと、そこで照れないてよ」

ニカがさらにギュッてしてくる。



甘くないニカにも甘いニカにも
どっちにもドキドキするから
結局私はニカにドキドキしちゃうんだろう。



「ニカ」

普通に呼んでみる。

「ん？」

ニカが返事をくれる。



「…高嗣」

顔を見れないけど呼んでみる。

「んふふ、なーに？」

ニカが嬉しそうに笑う。



違う呼び方してみるか。



「ジャイアン」

「は？」

「スネ夫」

「…ん？」

「出来杉くん…や、コレは違うな」

「はぁ？」



確かにニカはなんて呼んでもニカだな。

呼び方はどうでもいいかも。



「ニカ」

「…なんなの？」



顔を見て呼ぶけど
さすがにニカが少しムッとしてる。



「『ニカ』も『高嗣』も『ジャイアン』もニカだもんね。うん、好きに呼ぶ」

「……はあ？」



不思議そうに私を見るニカに

「どんな名前でも、好き」

キチンと言うとニカは

「…そっかぁ」

嬉しそうに笑ってくれた。

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