太陽の当たる場所 9

4U 19 side 2 ページ32

Aとご飯を食べてると
洗濯機が鳴る。



そーいやA、
洗濯物洗濯機に入れたまま帰ろうとしてたよね。

洗濯物終わるまで出掛けらんないじゃんと思ったし
せめて言ってから帰ってよ、とも思った。



…思い出したらなんか腹が立ってきた。



後から思い出して怒るとか
最低だって思いつつも黙ってると

「………ごめんなさい」

Aが言う。



あ、思い出したのかな。



でもわざと聞く。

「何が？」

「洗濯物、入れたまま帰って」

覚えてるんだ。
しかも自覚あったんだ。



「別に？俺が先に怒らせたんだし。次やったらめちゃくちゃ怒るけど」

口調がキツくなっちゃう。



Aの顔を見ないでいると
手が止まったのが目の端で見えた。

「…怒ってるじゃん」

悲しそうにAが言う。

「怒ってない」

また同じくだりを言い合ってお互いホント学習しない。



でももう折れどころが分からなくて
席を立とうとしたら

「「ごちそうさまでした」」

まさかのハモる。



チラッと俺の様子を伺ってるAが可愛いから
つい笑っちゃうとAが嬉しそうで。

このタイミングで許せば良かったのにムスッとしちゃうとAがめちゃくちゃ悲しそう。



あー、大人げないな。



どうしようかな、と思ってたら
テレビでAが大好きな芸人さんのネタをやっていた。



うん、今だな。

「A」

Aを呼び寄せると膝の上に乗せて
後ろから抱き締めた。

「…ニカっ？」

Aが驚いてるけど知らない。



そのままでいるとAの力がフッと緩んで
少しずつもたれてきた。

最初は緊張してたのにどんどんリラックスしてきたAは
オチのところで声を出して笑う。

何度も見てるネタなのにね。



そしてネタが終わってCMになるとAは俺の隣に座り直して
グイッと俺の顔を自分の方に向けると

「ねぇ、ニカ、仲直りしよ？」

悲しそうな顔で言う。



「洗濯物、本当にごめんなさい。私も同じことされたら嫌だからもうしない。だからもうムッとした顔しないで？」



折れどころを見失ってたのはこっちなのに
Aからそんな事言われちゃったら
俺がめちゃくちゃ子供みたいに思える。



だから

「ん、分かった」

頷いて笑ってみるとAがものすごく嬉しそうに笑って抱きついてくる。



ホント、敵わない。

「ありがと、A」

突然お礼を言う俺に

「は？なんで？」

Aがびっくりしてるけど。



Aの無邪気さに救われてる。

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