太陽の当たる場所 9

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仲直りの後

「「かんぱーい」」

ルーフバルコニーで
ニカと乾杯する。



ニカに抱きついてる間
私がずっと缶ビールを手にしてたから

「俺も飲む」

って缶ビールを取りに行くニカの背中に慌てて言う。

「私もっ」

「え？まだあるでしょ？」

「もうカラなの」

「あははは！はーい」

おかわりを要求する私に
大好きな笑顔でビールを取りに行くニカ。



ニカが笑ってくれてる。
もうそれだけで嬉しかった。



だから戻ってきたニカが

「…めっちゃ嬉しそうじゃん」

まだニコニコしてるのも嬉しくて笑ってると
ニカに言われる。



ニカが笑ってるからだよ。



でもそう言わずに

「もう1本飲みたかったからね」

「ホント、呑んべぇだよね」

イヒヒヒ、って歯を見せて笑うニカに
どうしようもなくときめいた。




ビールを飲んで遠くを眺めてると

「いつ荷物運ぶ？」

ニカが言う。



そうか、荷物運ばないとか。
なんて考えてると

「あとね、この部屋の鍵は没収するから」

当然のようにニカが言うからびっくりする。



「何で！？」

「Aすぐここに逃げるから」



別に悪いこと言ってませんけど？っていう
涼し気な顔でニカが言う。

実際ここに逃げてきた私は言葉に詰まる。



「でもここ私の部屋だし…」

「もちろんたまにここにお互い泊まりに来る日があってもいいと思うんだよね。別荘みたいで良くない？」



ニカは楽しそうに笑う。

ただその笑顔が何かを隠してるようにも見えたから思わずじーっと見ちゃうと

「……ここくらいしか出かけられる所ないじゃん」

ニカは気まずそうに私から視線を逸らす。



そこで改めて分かった。

ニカにとって私がニカとどこにも行けないのが
そんなに負い目だったんだね。



「だったら尚更私も鍵持たないとダメじゃん」

「その時はちゃんと渡すから」

「やだよ めんどくさい」

「はあっ！？『めんどくさい』って酷くない！？」

「そもそもここは私の家っ！家賃払ってるんだから！」

「じゃあそれも俺が出すよ。ここも2人で住むんだから俺の家でもあるよね？」



ニカがここのことを『俺の家』ってサラッと言って

「一緒に住むってそういうことでしょ？」

まっすぐな目で言われて
急に『2人で住む』という事実に緊張してしまったんだけど。



「こっちの家は高いからAには出せないだろーから。そもそもここ家賃いくら？光熱費どのくらい？」

なんて現実的なことを聞かれて。



一気に現実に引き戻される。

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