太陽の当たる場所 8

never 17 side 2 ページ32

うちに帰る途中から
色々な気持ちで
ぐちゃぐちゃになった。

ミツたちに送ってもらって家に着いても
シャワーは浴びたけどその後何もする気がおきなくて
ぼーっとする。



千賀に電話しようかな。

でもどうしても俺から電話するのも、って思っちゃう。



どのくらい時間がかかったか。
ふと思う。



いまA、どうしてんのかな。

この前俺がいたから頑張って
勇気出したって言うけど俺にはそんな勇気出ないや。

Aが頑張ってるから頑張ろうとか思えない。

自分の事しか考えられてないや。



…そーだな。
Aに会えたら頑張れるかも。

顔見れたら頑張れるかな。



ホッとするAのあの笑顔見たいな。



…電話してみようかな。

あ、そういえばさっきLINEしようとして………



そのタイミングで玄関で物音がして

「ニカっ」

Aの声がする。



え？

なんで？



「……どしたの？」



玄関に行くとAはニッコリ笑って

「叔父さんのお店で角煮食べたらものすごく美味しくて、ニカと食べたくて貰って来ちゃった！」

紙袋を掲げる。



その笑顔がものすごく嬉しそうで。

本当に一緒に食べたくて
俺のために来てくれたって分かる。



笑顔がホッとする。

毎日見ていた変わらない笑顔。
優しい声のトーン。

やば。

嬉しすぎる。



思わずAを抱き締めると

「ニカ？」

驚いてAが俺を呼ぶけど

「……」

Aに会いたいって思ったら会えたから嬉しくて何も言えなくて。

でも抱き返してくれたからいいか。



「ありがと」

意味不明だろうけどお礼を言う。



「私シャワー浴びてないよ？」

「うん」

「仕事の後だから汚いよ？」

「うん」

「…一緒に入る？」

「いいの？」

「お腹すいたから早くご飯食べたいんだもん」



理由がAらしくて笑っちゃう。

クスクス笑ってると

「あ、ご飯もう…」

Aが気にするから

「んーん、まだ」

ギュッて抱き締め直して深呼吸する。



少し香るオイルの香り。
忙しくて汗をかいたのかちょっと汗くさくて。
髪も埃っぽいしパサパサ。

それでも全然嫌じゃない。

仕事頑張ってきたんだな、って思う。



「シャワー浴びよ」

「ん」



離れてAと顔を見合わせると嬉しくて

「へへっ」

笑っちゃうと

「変なニカ」

Aも笑って。



ものすごくほっこりする。



ニコニコしてる俺に

「…お邪魔します」

Aが怯えてるけど。



普通に『ただいま』って言っていいのに。

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