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そのままの君でいて 17 T ページ34

一成くんと
Aが言い合いをはじめて。

俺、ここに居ていいの?
って空気になったんだけど。



「コンクールの結果は悔しかったけど。じゃあ優勝出来たとしてその先何があるのかって考えた時に、私は本当にそこを目指してたのかなって思ったの」



真剣なAの声。



Aと出会った時
それでご飯も食べられるなくなってたもんね。

でもコンクールの結果についてそう思ってたことは
知らなかったよ。



そんなAの言葉を
一成くんは黙って聞いてる。



「一成は私がピアノを弾く理由のルーツって覚えてる?」

「ばーちゃんだろ?」

「うん。それを裕太が思い出させてくれたんだけど」



緊張感のある中で
ふと自分の名前が出てドキッとする。



「裕太はきっかけに過ぎなくて。バーで弾いてみたりこの前バンドで演奏してみた時に純粋に弾くのが楽しいって思ったの。こんな気持ちいつぶりかな、って」



一生懸命Aが話すのを
一成くんはじーっと見てる。



少しして

「…なるほどね」

一成くんは少し笑う。



「まぁ確かに最近のコンクール前のねーちゃんは弾いてて楽しくなさそうだったもんね」



なんて一成くんが言うからこのまま和やかに終わるかと思ったら

「…けど、このまま終わるのが悔しい気持ちもある」

Aが小さく言う。



…そうだったんだ。

悔しい気持ちあったんだ。
それも知らなかった。



一成くんは

「だろーね」

分かってたみたい。



「クラシックといまねーちゃんが弾いてる弾き方は違い過ぎるからまたコンクール出るってなったら大変だよ?」

「…分かってる」

「でもまぁコンクールに年齢制限ある訳じゃないから数十年後にまた出てもいいしね」



そう言って
一成くんは2本目のビールを取りに行く。



チラッとAを見ると
俯いてテーブルの下でギュッと握りこぶしを作って何かを堪えてるように見えた。



全然知らなかった。

Aがこんな気持ちを抱えてたなんて。



でも俺はこの数ヶ月Aが頑張ってるのを
隣で見ていたから。



大丈夫、Aは頑張ってるよ。

コンクールだっていつかまた出たいって決意した時にまた頑張ってみたらいいと思うよ。



そう伝えたかった。



だからAの小さな握りこぶしに俺の手を重たら
Aが俺を見上げて
ホッとした顔をして嬉しそうに笑う。



伝わったみたい。

握りこぶしを解くと俺の手に指を絡めるA。




Aがどの道を選んでも
近くで支えたいな。

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りさ - shizuさん» わかりました(*^-^*) (2021年3月4日 3時) (レス) id: d9bbc47835 (このIDを非表示/違反報告)
shizu(プロフ) - りささん» お待たせしました。続編に進みました! (2021年3月3日 20時) (レス) id: 9bf290c5ee (このIDを非表示/違反報告)
りさ - 続編楽しみにしてます(*^-^*) (2021年2月21日 1時) (レス) id: 4e892c9c3e (このIDを非表示/違反報告)
りさ - 続き待ってます(*^-^*) (2021年2月19日 1時) (レス) id: 983b81c132 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - 続き楽しみにしてます(*^-^*) (2021年2月11日 1時) (レス) id: 7618a5cf86 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:shizu | 作成日時:2020年5月3日 13時

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