サイボーグな彼女 12

好きすぎるから 20 ページ25

涼さんは
少し休んだら回復する。

撮影の後半に戻ってきた。



「ありがとう」

「いえ」


もう大丈夫ならいよいよ問題ない。

冷たいかもしれないけど
ここで心配する必要はないだろう。

私はもう立場が違うんだから。



宏光がチラッとこっちを見て涼さんを見てホッとした顔をしてる。



「優しいね、北山さん」

宏光の反応を見て呑気に涼さんは言ってるけど。



「多分普通の人間の反応ですよ。目の前で倒れかけられてそのままだったら誰だって気分悪いですから」

「相変わらずドライだね」

「人はそう簡単に変わりませんから」



そもそも薬をちゃんと飲んでればこんな事にならなかったのに。
何を考えてるんだか。



撮影を見守ってたらしばらくして

「変わるよ」

ポツリと涼さんか呟く。



なんのことか分からなくてそのまま聞き流してたら

「人は変わるよ。A」

すごく久しぶりの名前呼び。



涼さんがこう呼んでたのは付き合ってて2人だけの時だけだった。

ゼミの決まりでゼミ仲間は下の名前で呼ぶことになっていたから
涼さんは私のことを出会った時から『ちゃん』付けで呼んでたし
付き合ってからでもゼミ中も呼び捨てにはしなかった。

そこはお互いゼミ仲間でもあったから
涼さんはゼミ中は公私混同を避けてくれていた。



別れてからは『ちゃん』付けに戻っていたし
名前で呼び捨てされたのは別れた時以来。



懐かしい呼び方にさすがにドキッとした。

再会してからゼミ時代の『ちゃん』付けで統一してくれていたけど呼び捨ては久しぶり過ぎて。



でも

「なんですか？急に」

今は仕事中ですけど。



「変わっちゃったよ、Aは」

涼さんはなおも言う。



もし仮にそうだとしてもいま話すことではないと思ったから

「この後別行動ですよね」

仕事の話に切り替えた。
この撮影が終わったら私と宏光はバラエティの収録で涼さんは別の仕事の予定だった。



「うん。そっちは夜までだよね」

「はい」

「終わったらそっち行っていい？」

涼さんは小声できいてくる。



何を考えてるんだろう？

「…休んでて下さい。また倒れたらどうするんですか？」



びっくりしてると

「…はいはい」

涼さんは苦笑い。



何も面白くないんですけど。



「そんな怖い顔しないでよ」

「炭谷さんが変なこと言うからです」

「……そう見えるよね」



涼さんはそう言ったきり黙ってしまう。

違和感は感じたけど
私には言う権利がないので何も言わなかった。

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