すぐ近くにいる another story 3

秘めた想い T 7 ページ10

納涼会は大成功に終わる。

特に宮田くんが考えた余興のヲタ芸は
大盛況だった。

そんなことをしそうにもない
玉森くんと私が
宮田くんの指導の元でガチガチのヲタ芸をして
会社でもしばらく話題になった。

玉森くんの評価も上がって
女の人と話すのは相変わらずだけど
男の先輩にものすごく可愛がられて笑顔も増える。



出張で見逃したという営業部の方々のために
宮田くんに頼まれて営業部の飲み会に呼ばれて
そこでも披露。

二次会のカラオケも付き合わされて
そこでも披露したからフラフラ。

明日は休みだから
宮田くんは三次会に行くと言うけど
玉森くんと私はさすがに帰ることにした。



「さすがに後は営業部でやってくれって感じだよな」

「ね」



玉森くんとはだいぶ話すようになった。

会社ではあまり話さないけど
宮田くんと集まる時はお互い話すようになって
最近は2人でも困らなくなる。



「Aは電車？」

「うん、玉森くんは？」

「俺は歩いて帰るけどコンビニ寄りたいから駅行く」

「え、いいよ」

「遠慮すんなし。てかこの場合『ありがとう』だけ言って黙って送られなさい」

なんて言うから

「ありがとうございます」

丁寧にお辞儀すると

「はい、どういたしまして」

って返ってくる。



笑いあって駅に向かって歩いてると駅が近づくにつれて人が多いのが気になる。

「…なんか人多くない？」

「ねぇ」

玉森くんと顔を見合わせつつ駅に向かうと
タクシー乗り場がものすごい行列。



「「まさか」」

私と玉森くんの声がハモる。



スマホの運行情報を見ると停電で止まってるって出てる。

しかも復旧の見込みがないらしい。



「どうすんの？」

「んー、明日休みだし漫喫でも行くよ」

玉森くんの質問に答えたら「えっ」て顔をする。



「彼氏さんとか迎えに来ないの？」

「そんな人いません」

「そうなの？それは失礼」

なんて言いながらニヤニヤしてる。



「…けんか売ろうとしてる？」

「してないしてない」



でも玉森くんはまだニヤニヤしてるから鞄で叩いたら「イテッ」て小さく言う。



そしてしばらくして

「…うち泊まる？」

なんてサラッと言う玉森くん。



「へ？」

「俺も彼女さんいないから泊めても問題ないし」



そう言ってくれるけど。



「いやいやいや、ダメでしょう」

「なんで？別に良くない？ホントは給料前でお金ないから三次会も行けなかったんじゃないの？」



…黙ってたことを見抜かれてて何も言えない。

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