すぐ近くにいる another story 3

秘めた想い T 27 ページ30

夜遅く。

ようやく仕事が一通り終わって片付けを始める。

そろそろ日付変わるな、って頃に
玉森くんから電話が来た。



『ごめん、気付かなくて』

「ううん大丈夫」

『どうした？』

「明日の研修の打ち合わせの資料と北山さんへのメールどうしたかなって確認したくて」

『…………あ！』

玉森くんがいま思い出した、って声を出す。



「どっちもやっといたから大丈夫」

『え、マジで！悪い、ホントごめん』

「明日打ち合わせ前に資料確認しといて。メールはCCで送ってあるし」



なんて言ってたら日付変わるタイミングだったから
警備員さんが来た。

「まだかかりますか？」

「あ、もう帰りますごめんなさい」

ってスマホから離して答えてから玉森くんに

「じゃあまた明日」

切ろうとしたら玉森くんは

『…まだA会社なの？』

って低い声で言う。



黙っててもメールや資料のデータの保存時間でバレちゃうから

「うん、でも今から帰るよ」

正直に答えた。



『終電ないじゃん』

「タクシーで帰るよ」

『バカ！そーゆー問題じゃ…って俺のせいか、ゴメン』

玉森くんが反省した声で言うけど

「違うよ、私が要領悪いせいだから」

自分がスケジュール把握しきれてなかったのが原因だ。
玉森くんが作った資料を事前に確認出来てればこんなことになってなかったんだし。



『送るよ。事務所で待ってて10分で行く』

「いいって。タクシーの方が早いから。明日も仕事だよ？」

『Aもだろ？待ってろ』

玉森くんはそう言うと私の返事を待たずに電話を切った。



それから玉森くんは10分もしないで来ると

「マジでゴメン」

謝ってくるけど

「こっちこそごめんね、こんな遅い時間に」

って言って立ち上がった時にはもう玉森くんの腕の中で。



……何で？



驚いてると

「俺もう少ししっかりするから」

玉森くんは言う。




「ホントごめん」

「だから大丈夫だって」

何を不安になってるのか謝り続ける玉森くん。
背中をポンポンするとやっと離してくれた。



「あぁゴメン」

玉森くんは無意識で私を抱き締めてたみたい。
慌てて離れる。



「Aまで居なくなったら俺マジでヤバい」

「大丈夫だよ、いなくならないから」

「ホントに？」

「うん」



そう答えるとホッとした顔をする玉森くん。



満足したのか

「帰ろ」

玉森くんは笑って戸締まりを始める。



急に抱きつかれた私はまだ動揺が止まらなくて
どうしていいか分からなかった。

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