拾ってください。

俺を拾って下さい 8 T ページ17

「…た。裕太っ」

遠くでAが呼ぶ声。



目を開けると目の前にA。



「やば、寝た」

「ふふふふふー、これでこの課題達成だね」

ものすごく嬉しそうなA。



「あーなんかくやしいっ」

「何でよ！いいじゃない」

悔しがる俺を見て笑いながら言ってる。



そりゃAはいいかもだけどさ。
このお題クリアだから。



「よくないよー、もう少しこのお題引っ張りたかったー。気持ちいい曲ばっかなんだもん」

聞いてて心地いい曲が多かったし
何よりピアノを弾くAの顔が優しくてずっと見てたかったんだけど。



「やっぱり先生すごいなー」

「先生？」

「うん、私のピアノの先生」

そう言って嬉しそうに笑ってるA。



「裕太のこと話したらこの曲がいいって勧めてくれたの」

「え？俺のことなんて説明したの？」



ものすごく気になる。
Aに俺がどう見えてるのか。



「いい大人なのに熱中症になりかけちゃうようなおっちょこちょいさんで、クラシックあまり知らない子って」



何それ。

「前半悪口じゃん」

「えっ？だってホントのことじゃない？」

意地悪で言ってるんじゃなくて真っ直ぐ俺を見て言うから調子が狂う。



「とりあえずこのお題はクリアだね」

「うん」

「じゃあ次のお題は？」

って嬉しそうに聞いてくるAがどこか楽しそうで。

ふと気になって聞いてみた。



「いいの？」

「え？」

「またお題出して」

そうなるとまた俺がこの部屋に遊びに来ることになっちゃうけど。



「あ、そうか。裕太だって暇じゃないよね」

「いやいやいやいや、暇だよ？今はぜーんぜんひま」



んー、盛りすぎたかな。

でも今は稽古だけで忙しくない時だから。



「むしろAは忙しくないの？」

「忙しくはないかな。お仕事増えたけど」

「へー！なんのお仕事？」

「ピアノの先生のお仕事と演奏会のお手伝いのお仕事」

そう言いながらピアノの横にあった楽譜を取り出す。



「先生のお弟子さんが寿退社することになってその方の後任に就くことになったの」

「じゃあ今までみたいに来られなくなる？」

「ピアノの先生は昼間が多いし演奏会の練習も毎日じゃないから大丈夫だよ」

「それならよかった」



負担になったら嫌だから安心する。

だからと言って会えなくなるのはもっと嫌だな。



そんなことを考えてたら
またさっきみたいに真っ直ぐな目でAは俺に聞いてきた。



「そもそも裕太は何で私にそんなに構うの？？」

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