サイボーグな彼女 9

わからない？ 12 ki ページ10

寝ぼけていたとはいえ
Aに甘えられた俺は
だいぶテンションが上がった。

撮影をガンガンこなす。



「ほとんどNGないですね」

ある日の撮影で休憩中にタバコが一緒になった炭谷さんが言う。

「もうすぐライブですしリハ大詰めな中で年末の歌番組もリハもあるから時間ないんスよ」

って返したけど。



ホントは半分違う。



特に炭谷さんが立ち会うやつは出来るだけ早く終わらせたかった。

そうすればAと一緒になる時間が短くなるから。



「キスマイのライブ1度見て見たいんですけど」

炭谷さんがさらに言う。

「あ、ホントですか？」

「Aちゃ…Aさんに言えば見れたりしますかね？」

Aをちゃん付けして慌てて言い直す炭谷さん。



わざとか？



「あー、どうですかね。関係者席の管理は武田のはずなので俺から確認しますよ」

「え！タレントさんに手配させるわけには…」

「何言ってるんスかー！いつも一緒にタバコ吸う仲じゃないスか！」

なんて言ってAに近づけさせないつもりの俺。

炭谷さんが苦笑いしてる。




「どうしても近付けさせないつもりですね」

ふと炭谷さんが言う。
どういう意味かくらい俺にも分かる。

「…Aに寿退社されると困るんで」

一応軽めにチャラミツなテンションで言うと



「本当にそれだけですか？」



炭谷さんが言うから



「えぇ、もちろん」



ニヤッて笑って返す。




一応、雑誌の人と繋がってる人だし
炭谷さんがそういう事をリークするタイプじゃねーことは重々承知してるけど。
さすがに俺の口からAのことをどうこう言うのはさすがに微妙。




タバコから戻ると撮影再開。

チラッと撮影中にAを見ると炭谷さんと話してる。

能面みたいな顔をしてて笑っちゃうしホッとする。




撮影終わってリハ着に着替えて控え室に戻ってもAが居ない。

トイレか？


…俺も済ましとくか。





そう思ってトイレに向かう途中の廊下で話し声。



「…じゃあもう絶対ないってことだね」

「はい」



炭谷さんとAだ。




「お互い全部はじめてだったじゃん？それなのに10年経って再会するとかドラマみたいでさ」

炭谷さんが言う。



『全部はじめて』って言葉にドキッとする。
全部ってソウイウ事のことだよな。



「いま思えば当時は幸せでした。でも本当にごめんなさい」

Aが完全にフッてるのは分かるけど。




俺の知らないAを知ってる炭谷さんにものすごく嫉妬する。

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