はじめての。5 ページ47
部屋を飛び出して少し走ると
カバンの中からスマホが鳴ってる。
分かってる。
北山さんなことくらい。
でもいま話を出来る気がしない。
もういやだ。
どうしたらいいのか分からない。
両思いになれたと思ったのに
なった途端にこんなことになって。
皆と会えたのは本当に楽しかった。
からかってるのに悪気がないのは分かってるけど
涼さんとのことを弄られるのは嫌で。
いま一番一緒に居たいのは北山さんだから
涼さんじゃないから。
決して涼さんが嫌いな訳じゃない。
好きなのが北山さんなだけで。
でも北山さんはあんなに悲しい顔をしてた。
「炭谷さんとどこか行ってた？」って
何でそんなことを聞くんだろう。
私、言いましたよね？
北山さんにしか興味がないって。
でもそれじゃダメなのかな。
やっぱり私とじゃダメなのかな。
北山さんは幸せじゃないのかな。
北山さんがあんなに悲しい顔をするなんて。
外で大泣きをしてる私を皆が見てる。
こんな顔じゃどこにも行けない。
でも隠れたい。
…あっそうか。
マンションに戻ってポストを確認すると
封筒に入った車の鍵。
武田さんがポスティングしてくれてる。
鍵を持って後部座席に乗り込むと
北山さん用の予備のタオルで顔を覆って泣く。
その間も鳴ってるスマホ。
そうだ。
北山さんは追ってこれない。
外で目立つ訳に行かないし。
外に出ちゃったら追って来れない北山さんは不利になる。
フェアじゃないか。
涙が少し落ち着くと深呼吸する。
ようやく落ち着くとスマホを取り出す。
着信の履歴を見ると
『北山 宏光』
何件もあった。
ものすごく心配かけてるよね。
深呼吸すると掛け直す。
すぐに繋がった。
『開けていい？』
スマホを当ててない側からも少し聞こえる声。
慌てて顔を上げると北山さんが車の前に居た。
『入れて？』
北山さんが言うから返事をせずにドアを開けた。
車に入ってくると
「うぅーさみっ！」
言いながら車に乗り込む。
確かに今日は冷えてる。
すぐにブランケットをかけると
「あは、ありがと」
そう言って少し笑う北山さん。
そして沈黙。
…なんて言おう。
北山さんを見ると
やっぱり悲しそうな顔で私を見てる。
「ごめん」
北山さんが言う。
「俺、ものすごく嫉妬してた。本当にごめん」
そう言っていつもみたいに頬に触る。
いつもの暖かい北山さんの手が嬉しくて
また涙が零れた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 886人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
咲良(プロフ) - shizuさん» 絶対(笑)まぁそういう系だと恥ずかしいですねw (2019年7月7日 21時) (
レス) id: 29a9983703 (このIDを非表示/違反報告)
shizu(プロフ) - ﾋﾛﾒﾛﾝさん» コメントありがとうございます！キュンキュンまでが長くてクレームもいただいてたりしてますがのんびり更新しますのでまた是非読みに来て下さいませ！ (2019年7月7日 21時) (レス) id: 9bf290c5ee (このIDを非表示/違反報告)
shizu(プロフ) - ぴのさん» 仕事してて書きたくなった時の葛藤がヤバいです 笑 ほどよく頑張って更新します！ (2019年7月7日 21時) (レス) id: 9bf290c5ee (このIDを非表示/違反報告)
shizu(プロフ) - ATさん» 長かったので甘々が自分でも染みます。また是非読みに来て下さいませ！ (2019年7月7日 20時) (レス) id: 9bf290c5ee (このIDを非表示/違反報告)
shizu(プロフ) - risaさん» 正直コメントいただいた頃が一番ニヤニヤしながら書いてました。楽しかったですー。次の10はもう少しニヤニヤしながら書けそうです！ (2019年7月7日 20時) (レス) id: 9bf290c5ee (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：shizu
| 作成日時：2019年6月18日 3時
