この想いの結末は 8

after 月が綺麗ですね 5 ページ40

アコside



直晃さんと出会ったのは
太輔がデビューする前だった。

皆でファミレスでご飯食べてたら
仕事のお迎えだって言って
やってきたのが直晃さん。



スーツを着ててものすごく怖い顔をして現れたから
どこの取り立て屋かと思って正直びっくりした。



「今日は夜から仕事って言っただろ？」

「…トイレ」


迎えに来た直晃さんに返事をしないで
太輔はトイレに行っちゃう。



この時の太輔は仕事がうまくいってなくてやたらツンツンしてて
私たちも正直接し方を困っていた。

でも一緒に居たがるし
太輔自身も困ってるのが分かったから普通にしていた。



トイレに行ってる間
太輔の戻りをただ待つ直晃さんに

「…あの、ごめんなさい。私たち連れ回しちゃったんで…」

声を掛けたら

「いや、アイツがちゃんと把握してろって話なんで」

そう言った声の口調が柔らかくて。



ギャップがたまらなかった。



それ以来何度か直晃さんは迎えに来た

たまたまその日はバレンタインで
来る予定の子が1人来なくて。



「行く前に一服させてよ」

そう言って直晃さんが返事する前に行っちゃう太輔を見送る直晃さんに

「いつもお迎えお疲れ様です」

ってチョコレートを渡した。



「…え？」

びっくりして私を見る直晃さん。




「あ！余り物なので気を遣わないで下さい。ホントは他の子にあげる予定だったんですけど来れなくて…」



遠慮しないで貰ってほしいから言ってるんだけど
口にしてからまるで「いらないからあげます」って言ってるみたいだな、って思ったから



「あの！いらないからどうぞって言ってるわけではなくて！せっかく用意したのに美味しいから誰かに食べてほしくて…」

って慌てて言ったんだけど
何だか言えば言うほど言い訳みたくなってて
どうしよう、って困ってたら



「ぶっ！！」



直晃さんが盛大に吹き出す。




「ありがとう、嬉しいよ」

そう言って笑った顔がめちゃくちゃ優しくて。



久しぶりにものすごくドキッとした。



それ以来会う度に挨拶したり
当たり障りのない会話はするようになった。



でもそれからしばらくして
太輔はお迎え無しでキチンと仕事に行くようになり

仕事帰りに合流する時も
太輔が送ってもらうタイミングで偶然見る時くらいしか会うことはなくて。



素敵な人だったな。

チョコ渡せて良かった。



って思うだけで終わっていた。



その後私には彼氏が出来たし
直晃さんのことは頭の片隅に居る程度だった。

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