サイボーグな彼女

一心同体 3 ki ページ37

夢を見てた。


何か温かいものに包まれてる夢。
足元がフワフワしてて、トランポリンみたいで歩きにくい。

埋もれそうになる。

ーーーー助けてっ！！




どこからともなく手が伸びる。
それに必死にしがみつく。



「北山さん、着きましたよ」

その手からそんな声が聞こえた。

誰？

「北山さん」


やっとハッキリする。
Aだ。



…ん？

あれ？



目を開けた。
心配そうに振り返ってるA。

あ、うちに着いたのか。


「マンション着きました。動けます？」

…夢の後だから何だか恥ずい。
小さく頷く。


起き上がると、少し目眩。
やべーなこれ。



「北山さん、部屋まで送りますか？」

Aが言う。
お願いしちゃおう。
頷いた。



彼女は助手席にあった自分のカバンや、
いつの間にか買ってたスーパーやドラッグストアの袋と、俺のカバンも持つ。


…すげー荷物だけど。



俺も立ち上がってAに支えてもらって車から降りると、そのままAは俺の腕を掴むと自分の肩に回してる。



え！マジで！！

抵抗する力はないけど、彼女は右に俺、左に荷物の状態で歩き始める。

すげーんだけど！申し訳ねーんだけど！
と思いつつも断れはしない。



朦朧とする意識の中で俺は自分の部屋に進む。

「あのっ！少し車停めさせて下さいっ」

途中のコンシェルジュに声掛けも忘れないA。



玄関でなんとか靴を脱ぐと、寝室に向かう。
ベッドに着くと、Aを押し倒す形で倒れた。



彼女は平然と起き上がると、電気をつけながら

「北山さんっ、何か食べて薬飲みましょう」

と、スーパーの袋から何か取り出した。



「無理、とにかく一度寝かせて」

俺はAのストールやコートを脱ぎながら、とにかく早く布団に潜り込みたかった。

女の子に大変な思いさせたのが申し訳なくて、恥ずかしくて。

「薬飲まないと…」

尚も言うから、

「ぅるせぇっ！とにかく寝るっ！！」

思わず怒鳴った。
ただの八つ当たりじゃん。

やべ、と思ったけどもう取り消せない。



すると、



「ダメですっ！！！」




俺の怒鳴り声を上回る声で言うA。

…びっくりした。




「仕事休みたくないんですよね？治したいんですよね？」

ものすごく真剣なA。

「…はい」

勢いに負けて頷く。

「この中から何か1つでいいから食べて下さい」

スーパーの袋を広げる。

おずおずと果物のゼリーを選んで食べ始めた。



…怒るとなかなか怖ぇな、A。

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