サイボーグな彼女

マネージャー開始 2 ページ18

「Aさんがどんどん北山さんを甘やかすから玉森さんから『こっちにも加湿器つけてー』って言われたんだけど」

「すみません」



マネージャー同士のミーティングで
玉森さんの担当の杉山さんからクレームが入る。

言ってることは嫌そうだけど
目が優しいからそこまで怒ってなさそう。



マネージャーになって1ヵ月
毎週ミーティングをやって情報共有するんだけど
マネージャー同士はだいぶ打ち解けてきた。

杉山さんは歴は2年目だけど5歳上で1番年上。
私的には1番話してて落ち着く。



「あはは、うちも入れましたよ。二階堂さんがうるさくて。まぁ舞祭組はツアーやるし、確かにあった方がいいしね」

舞祭組担当の小林さんが言う。

小林さんと酒井さんは同期らしく
共に3年目で私より3つ下。

社歴は私の方が長いので
事務処理は私が教えてたりする。



「太輔は何も言って来ないなー」

「え、加湿器めちゃくちゃいいですよ」



武田さんが言うと酒井さんが食いつく。



「年末年始で忙しくなる時に風邪引いたらヤバイですからね」

「…まぁそうか」



なんて加湿器トークから始まった打ち合わせは
年末年始のスケジュール確認がメイン。

歌番組に、年明けのレコーディング。
舞祭組がツアー中のバラエティの収録の確認だった。



「そーいやA」

「はい」



武田さんがふと呼ぶ。



「お前の家と北山の家って近いか？」

「車で20分くらいです」

「だよな」



朝早い時大変なんだけど
迎えに行くとちょうどエアコンが効いてて丁度いいかなって思ってた。



「北山の近くのマンションに社宅で借りてる部屋があって、空きが出たからお前引っ越す？」

「え、いいんですか？」

「おー、言っとくよ」

「ありがとうございます」



朝晩合わせて40分のロスが減るー。
地味にありがたかった。



「なんでこんな優遇するかと言うと」



急に声を潜める武田さん。



「北山、映画決まりそうだよ」

「ホントですか？」



思わず少しだけ大きな声が出た。
その声に皆が私を見る。

「Aさんの張った声、初めて聞いた」

「…って言っても普通より少し張っただけだけど」

小林さんと酒井さんが言う。



「まだ決まりじゃないけどな。ただ決まったら確実に忙しくなるから」

「はい」



武田さんの言葉に
気を引き締めなきゃ、って思って力強く頷く。



そっかー、映画か。

決まるといいな。



北山さんのお仕事なのに
自分のことみたいにすごく嬉しかった。

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