潜書参・ ページ10
太宰を見つけるなり中島は、もう一人の中島を他所に太宰へ駆け寄った。
一方で太宰は、中島を見付けてパァと目を明るく輝かせた。
太宰は気付くと有碍書の中で一人きりとなり、不安がこみ上げて来て仕方なかったようだ。
「見つけたぞ。」
『その人が探している人ですか?見つかって良かった!』
中島の後を付いたもう一人の中島、この世界の者と名前が同じでややこしいのでこちらの世界の者は下の名前で呼ぼう。
まぁ話は逸れたが敦は、中島に駆け寄った。
「あぁ、世話になったな。」
『いえ、探偵ですから。』
中島と敦の会話を太宰はただじっと見ていた。
「なかじ、んグッ!」
太宰は、中島の名前を呼ぼうとし、それを中島は強引に口を塞いで阻止した。
そして太宰の耳元に口を近づけ
「この白髪はこの世界の俺だ。面倒だから李徴と名乗っている。お前も合わせろ。」
太宰は中島の本気の目をみて抵抗せずに頷いた。そしてその様子を見た中島も手を外してあげた。
『あの、李徴さん、どうかされましたか?』
「いや、何でもない。此奴は・・・津島だ。」
太宰は文句言いたげに中島を見た。
しかし人をあまり疑わない敦はそれをあっけなく鵜呑みした。
どの道、今生では太宰治として生を受けていても、元は津島修治は本名なので特に支障は無いだろう。
『津島さんですか。僕は中島敦って云います。』
「中島君、ね。俺は津島修治。李徴と一緒に俺を探してくれて有難う。」
太宰は人物名をぎこちなく云った物の、律義に礼をした。
「此処は話をするのに人が多すぎる。中島、人気の無い場所を案内しろ。」
『はい、分かりました。』
中島はまたもや敦に指示を出した。もはやパシリである。
それに素直に従う敦も敦だが。
太宰はその様子を見て、こっそり、裏と表がそれぞれ体を持って転生していたらこうなりそうだな、と思った。
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エリカ - すごく面白かったです!続きを待っています! (2018年3月17日 10時) (レス) id: e5d2f5896d (このIDを非表示/違反報告)
庵 - こういうの探してました!いやぁ、これは鼻血もんですね。更新期待してます。頑張って下さい!! (2018年3月10日 0時) (レス) id: 359f234116 (このIDを非表示/違反報告)
くれーぷ/紅花(プロフ) - 文アルと文ストどちらも好きな私にとっては嬉しすぎて昇天しそうでした…← 出てくる文アルキャラが文ストキャラと同じ名前の人だけじゃなく色々な人が出てくるのですごく面白いです!更新楽しみにしてます( ´∀`) (2018年1月23日 19時) (レス) id: d036a490f0 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ - 面白かったです。すこし気になったのですが、登場人物が侵食者というのは、作者さんのオリジナルでしょうか? この前別の小説で見たことがありまして…。偶然ならいいのですけれど、少し気になりまして…。 (2018年1月20日 18時) (レス) id: 48db98a9a7 (このIDを非表示/違反報告)
苺パフェ - とても面白かったです!ボクは空白のSecretさんのほかの作品からここにきたのですが、どの作品も面白くてすごいです!応援しているので、頑張ってください! (2018年1月20日 13時) (レス) id: 92fa33393a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空白のSecret | 作成日時:2018年1月7日 22時