臆病ギタリスト (ページ30)

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ここ数日、来なくなったアイツ。

俺の些細な言葉にキレて出ていったっきり音沙汰ない。

毎日のように訪れてはピーピー言って、仕事の邪魔なんかもしたりするアイツが居ないと、まぁ作業もスムーズに進む。

一方で、この虚無感はなんだ。

モヤモヤして仕方がないから、地味に日課になった散歩にでも出る。

Aと出会ったのも散歩中の事だった。

静かな夜、微かに聞こえる歌声にいざなわれてフラフラしていると、警官に声をかけられ、ピタリと止まる音楽。

そこにいたのはか弱そうな女だった。

珍しく知らない人に声をかければ少しビビられたが、案外素直で良い奴。

かと思えば大間違い。

ズケズケと俺に入り込んでくるクソガキだった。

そのくせにいっちょ前にいい声を持っているのに、上手いこと扱えていない。
コイツのマジの歌を聞きたい。そんな興味本位だった。

既に懐かしい公園に辿り着いたが、相変わらず人気はない。

ここに居ればまたAが来るんじゃないかと思ってしまう。

グッと背伸びをして空を見上げれば、澄み渡った綺麗な空。

俺の好きな人がいる空。

そっちでも変わらずやっていますか？
俺のこと、見てくれていますか？