その後の話:オリバーと水雲 ページ40
『あ』
「やっべ」
人通りの少ないフロアでばったり出会った彼は、僕を見るなり失礼な声を上げる。
急いで手にしていた煙草を消すと上空に漂う白煙をパタパタと手で払ったのだった。
「なんでここ通るんですか」
喫煙室から出てきた彼、Aくんはポケットから小瓶を取り出しシュッシュと上空に何かを噴射しながら理不尽な発言。
ふわりと香るシャボンの香りに、煙草の匂いを誤魔化す為かとその行動を見つめた。
『いくら普段から人の気配が少ないフロアとは言え、見られたくないのなら本社で喫煙はやめた方がいいのでは?』
「そのつもりだったんですけどね」
『…何かありました?』
どこか元気のなさそうなAくんに尋ねる。
普段ならなんでもないです、と誤魔化すので今回も言ってはもらえないだろうなぁなんて思っていたのに、帰ってきた言葉は…
「ちょっと、嫌なことがありまして」
『おぉ』
「ふっ、なんですか?おぉ、って」
『いや、まさかAくんの口からマイナスな言葉が聞けると思わなかったもので』
「オリバーの中で私ってどんな人になってるんですか」
壁に寄りかかりながらフーと息を吐きつつ笑うAくん。
非の打ちどころのない完璧な人、とまではいかないものの、それくらいしっかりしてそうなイメージを持っている。
僕や景くんと食事を共にする時も相談事に乗るのはAくんで、しかも僕らにはない観点で話してくれるからすごく為になっていて。
そんな彼の口から出る嫌なこと、なんてよっぽどのことなんじゃないだろうか。
『話、聞きましょうか?』
ここにベンチありますし、と続けAくんが座りやすいように先に腰掛ける。
そんな僕にAくんは少しだけ困った顔をして隣に腰掛ける。
『話したくなかったら、無理には…』
「ごめん、今私ってば露骨に困った顔しましたね」
『いえ、まぁ、そうですね』
「オリバーに対してじゃないですよ。気をつかわせてしまったなって、思いまして」
なんだ、そんなこと。
『心配くらい、させろって』
「…男前オリバー出ましたね」
『茶化さなくっていいです』
「茶化してないですよ。ちょっと、キュンとしました」
『キュ…!?』
思いもよらない言葉に動揺する僕を見て、クスクス笑うAくん。
そんな彼の頭にポンと手のひらを乗せる。
『そうやって笑ってる方がAくんはいいですよ』
「……ほんと、男前」
そう言って目じりを下げて笑うAくんに、僕もつられて笑った、
シャボンの匂いに紛れてうっすらと香る煙草の匂いが、不快なはずなのに妙に心地よく感じた。
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なな(プロフ) - えある。さん» わたしも男主好きなので仲間ですね!褒めて頂けて嬉しいです!これからも応援していただけるようマイペースにですが頑張って書いていきます💪✨(あと何秒前に終了のものは連動とかではなく1話目2話目みたいな感じで使ってましたw) (2023年4月4日 17時) (レス) id: ec5992d1d9 (このIDを非表示/違反報告)
えある。 - 何秒前に終了みたいなのって、、、何話とかと連動してます? (2023年4月2日 23時) (レス) @page9 id: 9c1c96d73e (このIDを非表示/違反報告)
えある。 - 男主のやつもっと増えてほしいです〜 主にぼくに需要が、、、ななさん神。男主+文才の神。 応援してます〜 (2023年4月2日 23時) (レス) @page3 id: 9c1c96d73e (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - プラスチックさん» さりげないかんじで弄ばれるように書いているのでそう言って頂けて嬉しいです💕 (2022年11月26日 12時) (レス) id: 3e077f16ff (このIDを非表示/違反報告)
プラスチック(プロフ) - 夢主に弄ばれるライバー様方が可愛いです♡ (2022年11月14日 22時) (レス) id: 897ac6c9fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なな | 作者ホームページ:https://twitter.com/HakutoNa7
作成日時:2022年10月27日 16時