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優斗が先に入場して 。
私もすぐに入場だからと
隣のお父さんの腕に自分の腕を絡ませた 。
『 … お父さん?』
すると隣から鼻を啜る音が聞こえて
思わずお父さんに声を掛けると
父「 いや … 式になると実感が湧いて来て 」
お父さんはクイっと眼鏡を上げて鼻をもう一度啜る 。
そういえば昔からお父さんは厳しくもありながら
娘の私達にべったりだった 。
お姉ちゃんの結婚式の時も結構泣いてたし 、
きっと私まで嫁に行ってしまうことに
何処か寂しく感じてるんだと思う 。
『 もう入場だから 、お父さん泣かないでよ 』
父「 ああ … 」
目の前でスタッフさんが
ニコニコしながら 此方に と扉の前へ案内してくれる
この扉が開いたら結婚式が始まるんだ …
雄登は来てくれているのかな 、なんてね ……
雄登のことを考えるのは昨日でやめたはずなのに 。
スタッフさんがインカムで扉の向こうのスタッフさんと
コンタクトを取っているらしい 。
父「 A 」
そんな様子を見ていると
涙目になったお父さんが声を掛けてきた 。
父「 お父さんはいつ何があってもお前の味方だから 」
昔から言われていた言葉 。
本当にその言葉通り 、
いつどんな時も私の味方になってくれて
留学を決めた時も笑顔で送り出してくれた 。
『 うん 、わかってるよ 』
笑顔で答えると余計に涙ぐんでしまったお父さんの
腕にさっきより強く腕を絡ませた 。
父「 … 幸せに … 幸せになるんだぞ 」
そう言ったお父さんの優しく微笑む顔が
私の胸を痛めた 。
スタッフさんが3秒カウントをして
扉が開くと眩しい光が射し込んだ 。
あ … お姉ちゃんの隣に雄登がいる 。
彼は確かに私を見ているはずなのに
目が合わないのはベールに包まれているからかな?
隣でお父さんの鼻を啜る音が聞こえる 。
『 …… ッ 』
幸せになる 。
さっきお父さんにそう言えなかったのは
やっぱり私はまだ ……
確信してしまえば少し向こうでタキシードに包まれ
私達を待っている優斗の顔を見れなかった 。
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めろんぱん(プロフ) - このお話が大好きで完結後も定期的に読みにきます( ; ; )みるるんさんの作品大好きなのでこれからも応援してます! (2020年7月13日 4時) (レス) id: 3589a32c79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるるん | 作成日時:2019年6月16日 2時