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027. ページ27

..








「 …… 無理だよ 」

『 え?』

「 今更無かった事に出来ない 」













いつの間にか服を着ていたAが
驚いたように俺を見た 。












「 …… って言ったらどうする?」













俺は思っていたより 、
どこまでもずるい人間のようだ 。












「 どうするの?」

『 どうするって … 』












その困ったような申し訳なさそうな顔 。


いつからAは俺にそんな顔しか
見せなくなったの?









『 それでも無かった事にしなくちゃ 。』

「 …… 何で 」

『 じゃないと私も雄登も幸せになれないから 』









そうでしょ?って
また寂しそうに微笑むんだ 。












『 ホテル代もきっとタクシー代も出しただろうから 』

「 …… 」

『 ここに置いておくね 、ありがとう 』












財布から1万円を何枚かテーブルに置いて
部屋を後にしようとしたAの









「 待ってよ!」











右手を咄嗟に掴んだ 。









『 …… 雄登 、離して 』









デジャヴだ 。



4年前もこうやってAの右手を掴んだ 。









視界の端でテーブルに置かれた1万円札が
ひらりと床に落ちたのが見えたけど


あの時と同じようにこの手を離したら駄目だから 。












「 じゃあ好きだって言ったら?」

『 どういうこと … 』

「 俺がAのこと好きって言ったら 」

『 …… 』

「 その場合はどうするの?」









強く手を離そうと腕を引いていたAだったけど
スッと力が抜けたようだった 。









『 そんなこと言っても …… 』









俯いて俺を見ようとしないAの声は
少し震えていて流石に怒らせたかと怯みそうになる 。









『 …… 』

「 …… A?」









鼻を啜ったのが聞こえたと思ったら









『 そんなの遅すぎるよ … 』









顔を上げた彼女は涙をすうっと流していたから
思わず掴んでいた力を緩めてしまった









『 …… ッ 』













それに気づいたのか
一瞬で俺の手を振り切って部屋を出て行った 。









「 …… 遅すぎる?」









振り払われた手が行き場を無くし
ボーッとAの残像を見ていた俺は


閉まったドアの音によってやっと気づく 。









… また手を離してしまったのだと 。








..

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めろんぱん(プロフ) - このお話が大好きで完結後も定期的に読みにきます( ; ; )みるるんさんの作品大好きなのでこれからも応援してます! (2020年7月13日 4時) (レス) id: 3589a32c79 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みるるん | 作成日時:2019年6月16日 2時

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