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そんな生活をしていたら
気づけば卒業式まで後1週間 …
無事に大学にも合格したけれど
雄登とは全く話さないまでになった 。
その代わり未だ廉くんとの家に戻らないお姉ちゃんと
毎日のように一緒にいるみたい 。
『 ん?あれ?』
卒業式が終わればすぐニューヨークに発つからと
荷造りをしている途中
大事な書類が無い事に気づく 。
リビングに置きっ放しかな 、なんて
呑気に考えているとノックも無しに開いた部屋の戸 。
勢いよく開いた音に吃驚しながらも戸の方を見ると
『 雄登 …… ?』
私が探していた書類を手にした雄登が
こっちを睨むように入って来た 。
「 ニューヨークって何 」
『 えーっと …… 』
「 姉ちゃんと同じ大学じゃないの 」
『 …… 』
きっと手にしている書類を見たんだろうけど
静かに日本を離れるつもりだったから
予想外の出来事に固まるしか出来ない 。
「 … 生徒会長でしょ 」
『 え?』
「 俺から離れる絶好のチャンスとでも言われた?」
久しぶりに話すはずなのに
雄登の険しい表情に緊迫してしまう 。
「 ねえ 、答えてよ 」
『 …… 』
「 Aも離れていくの?」
私の両手をギュッと雄登の両手で包み 、
こちらを見る彼の目の奥の碧は
悲しそうにゆらゆらと揺れていた 。
ギュッと包まれた両手から
雄登が相当焦っていることだけは
物凄く伝わってきて
「 離れないでよ …… 」
『 っ ……… 』
思わず今までのように頷いてしまいそうになるのを
必死に抑えて首を振る 。
『 … ごめんね 』
ゆっくりと包まれている両手を離す 。
「 …… 」
『 もう雄登の傍にいることは 、出来ない 』
しっかりと目を見て言う 、伝わるように 。
「 …… ははっ 、そうだよねー 」
乾いたように笑う …… 雄登の悪い癖 。
「 ごめん 、これ勝手に見て 」
書類の端 、グシャってなってるよ 。
「 … 多分当日言えないから先に言うね 」
私も言えないから言うね 、雄登 。
「 卒業おめでとう 」
好きだったよ 。
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めろんぱん(プロフ) - このお話が大好きで完結後も定期的に読みにきます( ; ; )みるるんさんの作品大好きなのでこれからも応援してます! (2020年7月13日 4時) (レス) id: 3589a32c79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるるん | 作成日時:2019年6月16日 2時