キャンバス (ページ17)

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続き

大阪駅に向かうため、テレビ局のガレージに待機していたタクシーの助手席に亮ちゃんのマネージャーさんが乗り、後部座席にわたしと亮ちゃんが乗り込む。

わたしたちがシートベルトを締めるのを確認してからタクシーは動き出し、大阪に帰ってきてまでタクシーに乗るとは思わなかったなあなんてぼんやり考えていると、わたしの斜めに座っている亮ちゃんのマネージャーさんがこっちを振り返りながら口を開いた。

「鴻上さん大物女優なんですから、ひとりで出歩くのはさすがに危なすぎますよ」
「えーっと、」
…あれ、どこかで聞いた言葉だな。
「そうだよA、何かあったらどうするの？」
さっき警備員さんたちに言われた言葉をそっくりそのままいわれてしまい、返す言葉もなかった。
「ごめんなさい、耳がいたいです…」

亮ちゃんを待っている間の警備室での話をするとタクシーの中は笑い声でいっぱいになり、運転手さんまでがにこやかに微笑んでいて、叱られた子どもになったような気分で恥ずかしくなったわたしはちょっぴり頬を染めて俯いた。

「マネージャー、俺、今日もうスケジュール空いてたっけ？」
「今日は…もう何もないなあ。一泊して明日の朝に新幹線で東京に帰る予定」

スケジュールを確認しながら話す男性のマネージャーさん。お仕事の話をしている間はじゃまにならないよう、静かに二人の顔を見ながら会話を耳に入れていた、のだが…。

「じゃあ俺、Aに大阪案内してもらってくる」
「…ん？」
「じゃあ大阪駅で解散にするか」
「え！」
「鴻上さんに迷惑かけないようにな」
「ちょ、ちょっと！」
「Aはいや？」
「いやじゃない、けど、いいんですか？」

忙しいだろうし、ただちょっと会えたらな、ぐらいのつもりだったから、このあと完全にオフだと言われても突然すぎる。

首をかしげて横からわたしの顔を覗き込んでくる彼のほうにおどおどしながら顔を向けると、
「俺のマネージャーは理解あるマネージャーなんだよ～」
なっ！と言って目の前のマネージャーさんの肩をポン、と叩いた。

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