キャンバス (ページ19)

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吉沢亮の思い出ページ19

国宝と大阪にての続き(2018年3月22日)

『ママレード・ボーイ』の番宣で大阪に行く数日前にTBSで撮影があり、偶然そこでAのマネージャーの百田さんとすれ違った。

百田さんは最近の言葉で言い表すと所謂女装家で、普段は目立たないようにスカートなんかは履いていないものの、女性とも男性ともとれるようないつもおしゃれな服装をしている。

同じ男としては羨ましいほど高い身長で、遠くを歩いていても目立つから百田さんだとすぐにわかった。

「百田さん、」
「あら～、お亮ちゃんじゃないの。ごめんなさいね、今日はコウちゃんいないのよ～」
Aに会えるかもって期待してたのが顔に出てしまっていたのか、照れくさくなって「いやいや、」と話を逸らした。

百田さんの話によれば、最近までAが出演してた『アンナチュラル』がクランクアップして最終話は高視聴率で放送が終了し、番組のことで今後の話し合いがあったそうだ。

今回は解剖医、法医学の話だったか。
Aと最後にあったのはもう数か月前。その頃にはドラマの撮影はすでに始まっていて、「台詞は少ないのに覚えることがいっぱいで、また足引っ張っちゃいそうなの」と頭を抱えていたのを思い出した。

数年前にAが『コウノドリ』に出演していたとき、Aが初めて仕事のことで弱音を吐いているのを見た。「医療のドラマは向いてないかもしれない」と。

それでも諦めず妥協することなく、撮影のない日もオフの日もスタジオに行って監修を受け、先輩の姿を見て必死に自分の演技に変えていき、乗り越えて、そのドラマも大きな話題作となってどんどんAの知名度が上がっていったのを俺は目の当たりにした。

どんな役でもいつも一生懸命に全力でぶつかっていくだなんて、この仕事をしているならそんなことは誰もが当然のことだけど、全力で役を演じる、そんなAに感化されて、自分ももっとがんばらなきゃな、と思うようになって、そしていつしか、それは小さな恋心に変わっていったんだ。

「そういえば、」
組んだ片方の腕を頬に添えた百田さんが口を開いた。

手帳を開きながら「あら？あらあらあら～？」と唸った彼に「どうしたんですか？」と見上げながら訪ねると。
「お亮ちゃん、朗報よ～」
「？」
「明日から来週の火曜日までの5日間、コウちゃんおやすみで実家に帰るのよ～」

お亮ちゃんも大阪でしょ？青春してね～！
そう言いながら厚底の革靴を鳴らして、手を振り俺の前を立ち去った。

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