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68 止めに入る者 ページ23

「貴様…正気か!?」


一瞬にして正装へと変わった長谷部が、鞘から抜いた本体を和泉守に向ける。
その光景に誰も止めには入らなかった。

それもそうだろう。和泉守以外の刀剣男士たちは主を追いたい。守りたい。そう思っているのだから。

けれど、その中で一振だけが落ち着いた眼差しでこの行く末を見つめていた。

三日月宗近

彼だけは動じず、静かに和泉守の言葉を待っていた。


「主は来るなと言ったんだ。なら、俺らが駆けつけても邪魔になるだけじゃねぇのか?それでもお前らは行くのか?…それに、主には主の考えがあると俺は思ってる。」

「……なら和泉守、主の考えとは何だ。」

「そんなの俺は知らねぇよ。主が考えてる事なんていつも誰も分からねぇだろ。」

「貴様…」


一向に引く気の無い長谷部と、その前を退く気のない和泉守。
ましてや和泉守は正装では無く、内番服である。
そんな無防備な彼に長谷部は何も出来ないと和泉守は高を括っている。

そんな睨み合いの中、高らかに笑い声が響いた。
皆がその方向に目を向ければ、未だに茶をすすっている天下五剣。


「何を笑っている三日月!!」

「いやなに、和泉守に言い負かされているお前が珍しくてな。つい。……それにだ、俺も和泉守の意見に賛成だ。」


あの三日月が和泉守に賛成した。という事に皆が目を見開いた。


「貴様もか!主が危ないのかもしれないのだぞ!!」

「考えてみろ長谷部。主が危険な目に遭うのなら、この中の誰かしらを連れていくだろう…けれど、主はそれをしなかった。なら答えは明白だ。和泉守の言う通り、主なりに考えがあるのだろう。なら俺も主命に従おう。気長に待とうではないか。」


その言葉に皆が納得する中、長谷部は舌打ちをすると渋々本体を戻した。
そして、皆が静まって主の帰りを待つ姿に三日月は目を細めた。

良きかな良きかな

和泉守も安心して胸を撫で下ろす。
そして、少し遠くにいる三日月に軽く頭を下げて座り、主の行った方向を見つめていた。

彼もまた心配なのには変わりなかった。
けれど、相棒である堀川に主を任されその主からは来るなと主命を受けた。
それを遂行してこそ、かっこいい最近流行りの刀である和泉守兼定と言えよう。

主、どうか無事でいてくれ。

和泉守は拳を強く握りしめていた。

69 侵入者→←67 主命



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あごしわ - コナンって光合成みたいに推理しなきゃ逝っちゃう呪いでもかかってるんじゃないかなって思う時がある。 (2020年1月1日 3時) (レス) id: d41c4bfd58 (このIDを非表示/違反報告)
朧月(プロフ) - 式さん» その案名案ですね!!そうします!!暖かいコメントもありがとうございます(´∇`) (2018年8月7日 8時) (レス) id: 270593a483 (このIDを非表示/違反報告)
黒桜 亜琉麻(プロフ) - 上でお願い申し上げます! (2018年8月7日 2時) (レス) id: e742954296 (このIDを非表示/違反報告)
璃奈 - 上でよろしくお願いします。 (2018年8月6日 22時) (レス) id: 9d081775ee (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 上で、式さんのような感じがいいです。続き楽しみにしてます (2018年8月6日 14時) (レス) id: 01a97476ef (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:朧月 | 作者ホームページ:http://fblg.jp/510814/  
作成日時:2018年5月5日 21時

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