5 親子 ページ7
『…首領、壁に耳あり障子に目ありと云います。そういう発言はお控え下さい』
「つれないねぇ…。なら、いつなら子供らしくしてくれるんだい？」
『…それは……お出かけなど…なら』
珍しく、頬を赤く染めて視線を逸らすAに、拍子抜けした森はクツクツと喉を鳴らした。
「これは難解な答えだね」
『では、私はこれで。この資料は頂いて行きます』
「ああ。頼んだよ」
頭を下げ、部屋を去るAに森は悲しそうに眉を下げた。
そして、机の中の厳重に鍵がかかっている箱を開ければ、そこには一枚の写真があった。
「
麦わら帽子を被って、笑顔で振り返る女性の姿＿＿Aの母が写っていた。
だが、死人に口なし。森のその問いに答えるわけもなく、切なそうに微笑むと再び写真をしまうのだった。
昇降機で下へ降っていると、途中で止まり扉が開いた。
ふと顔を上げれば、燃えるような赤い髪が目に入る。
軽く頭を下げたAにその人物は微笑みかけた。
「鴎外殿の所へ行っていたのか？」
『…はい。任務だそうです』
「お主、また冷たくあしらったな？鴎外殿が、もう少し娘らしく、甘えてくれても良いと申していたぞ」
『…姐さん、いくら昇降機の中でも誰が聞いてるか分かりません』
「堅いこと言うでない。こんな雑音のする場所で盗聴も出来んわ。…安心せい、
全く、似た親子じゃ。と溜息をつく尾崎。
それに乾いた笑いを浮かべるA。
『…私はただ、父の弱味になりたくないだけですよ』
その言葉に、しかし。と何か言いたそうにしていたが、丁度一階に着きAはそそくさと外へ出た。
『では、姐さん。また明日、会いましょう。』
軽く頭を下げて、ニッコリと笑うAを見た尾崎は、再び溜息をつくのであった。
父の前で娘らしく振る舞えないのは、このポートマフィアが大きくなったのもあった。
それ故に、首領である森の弱味に繋がる真実を露見できなかった。
そうしている内に、父への対応が分からなくなってしまったのかもしれない。
それでも、Aは傍に置いてくれるだけで、十分だと思っているのも事実。
この親子関係を知っているのは、兄と慕った太宰、いつも傍にいた尾崎の二人のみ。
他の者は、首領に娘がいるなど夢にも思ってないだろう。
正確には双子…だが。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 120人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マナ(プロフ) - とても面白かったです！！続きがすごく気になる…頑張ってください！応援してます！！ (2020年8月25日 19時) (
レス) id: da5e25c6ab (このIDを非表示/違反報告)
朧月(プロフ) - かりんとうさん» こんにちは。楽しみにして頂いてありがとうございます...ただ、中々更新出来ず申し訳ないです(汗) (2019年5月21日 8時) (レス) id: 061be1d3a8 (このIDを非表示/違反報告)
かりんとう(プロフ) - こんばんは、とても面白くてこの先に広がるこの作品をとても楽しみにしています！これからも頑張ってください！！！ (2019年5月7日 21時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
朧月(プロフ) - 音奏さん» その様に言って頂きとても嬉しいです(^-^) 更新頑張ります。 (2019年5月1日 20時) (レス) id: 061be1d3a8 (このIDを非表示/違反報告)
音奏 - このような、素晴らしい作品を作れるなんてとても凄いです。続き、楽しみにしています。 (2019年5月1日 16時) (レス) id: 0e776977f0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：朧月 | 作者ホームページ：http://fblg.jp/510814/
作成日時：2019年4月29日 17時
