16 出直し ページ18
太宰は、複雑な顔をすると静かにその手を離した。
あの日、太宰は帰るつもりでいた。
友である織田作を助けた後に、帰るつもりだった。帰るつもりだったのだ。
だが、友は助けられず、仕舞いにはその友に人を救う側になれと言われる始末。
帰りたくても帰れなくなった。
だが、今更そんな事を彼女に云ったところで過去は変わらない。
自分のおかした仕打ちを覆すなど不可能である。
ゆえに太宰は一言も発する事が出来なかった。
その太宰を横目に、Aは無表情で敦に手を伸ばす。
しかし、倉庫に近づく足音に彼女は、残念。と言うと立ち上がった。
『時間切れか…出直すよ』
「…このまま探偵社に来る…というのはどうだい?」
『冗談でしょ?』
太宰の云うことに鼻で笑うと、何か思いついたかのように呟く。
『嗚呼、福沢さんから何も聞いてないのか』
「それはどういう」
どういう意味?と云うのを遮るかのように彼女は振り返ると自然な笑みを浮かべて云う。
『じゃあね、
その妹の姿を見て、太宰は泣きそうな気分になった。
もう兄とは呼んでくれない寂しさと、完全に一線引かれた寂しさ。そして、彼女がとても遠くに行ってしまう気がして、泣きそうになった。
Aの後ろ姿を見送った時
「おい太宰!」
国木田の荒々しい声が倉庫内に響いた。
太宰は、いつもの表情を浮かべながら振り返る。
「ああ、遅かったね。虎は捕まえたよ」
静かに云う太宰の言葉に、国木田は安堵すると彼に駆け寄る。
しかし、足元でぐったりと横たえている少年を見ると、その瞳はみるみるうちに丸くなる。
「その小僧…じゃあ、そいつが」
「うん、虎の能力者だ。変身している間の記憶がなかったんだね」
「まったく、次から説明しろ」
頭を掻きながら、国木田は太宰に渡されたメモ用紙を見せる。
そこには、簡単に云うと虎が現れるから周囲を固めろと書かれていた。
確かに、それだけでは重要な点が欠落している。
「肝が冷えたぞ。おかげで非番の奴らまで駆り出す始末だ。皆に酒でも奢れ」
ため息をつきそうな国木田の後ろから、数名の影が伸びる。
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マナ(プロフ) - とても面白かったです!!続きがすごく気になる…頑張ってください!応援してます!! (2020年8月25日 19時) (レス) id: da5e25c6ab (このIDを非表示/違反報告)
朧月(プロフ) - かりんとうさん» こんにちは。楽しみにして頂いてありがとうございます...ただ、中々更新出来ず申し訳ないです(汗) (2019年5月21日 8時) (レス) id: 061be1d3a8 (このIDを非表示/違反報告)
かりんとう(プロフ) - こんばんは、とても面白くてこの先に広がるこの作品をとても楽しみにしています!これからも頑張ってください!!! (2019年5月7日 21時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
朧月(プロフ) - 音奏さん» その様に言って頂きとても嬉しいです(^-^) 更新頑張ります。 (2019年5月1日 20時) (レス) id: 061be1d3a8 (このIDを非表示/違反報告)
音奏 - このような、素晴らしい作品を作れるなんてとても凄いです。続き、楽しみにしています。 (2019年5月1日 16時) (レス) id: 0e776977f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朧月 | 作者ホームページ:http://fblg.jp/510814/
作成日時:2019年4月29日 17時