檸檬色の君【アンナチュラル】 (ページ19)

今日:2 hit、昨日:11 hit、合計:30,351 hit

７ページ19

ASide

時計の針が進むのが遅い。

眠れることなく夜はふけていく。

『………あー』

ガシガシと頭を掻き回すと、私は立ち上がった。

そしてパソコンの電源をつける。

贖罪、贄、報復………。

ネットの記事を次々と漁る。

何か共通するものはないか、関連する記事はないか。

そしてふと、手を止める。

＜ブラック企業、会社員死亡＞

内容は次のようなものだった。

会社員(六十代男性)が死亡した。過度な労働にも関わらず、少なすぎる給料。十分に食べていけなかったことによる栄養失調が死因。会社はこのことについてすべてを否定。

私の中にある可能性が浮かび上がってきた。

その男性が勤めていた会社名を検索する。

＜マーレル株式会社＞

会社員三十人程度の小さな会社だ。

社長と副社長を夫婦で務め、かれこれ四十年でかなりの売上を伸ばしてきた会社。

ある程度考えがまとまる。

この考えが当たっているのなら、こんなにも悲しい自爆はないと思う。

頬を涙が伝った。

ちらりと中堂さんを見れば、規則正しい寝息を立てて夢の中。

時計の針は五時を指している。

外を見れば、ゆっくりと空が白み始めていた。

お願い、夜よ明けないで。

そんな願いが叶うこともなく、段々と明るくなっていく。

朝日の光が眩しすぎる。

日差しから逃げるようにパソコンの隣に伏せる。

眠たくない、そう思うが体はいうことを聞かなくて。

遅い眠りに吸い込まれるように入っていった。