檸檬色の君【アンナチュラル】 (ページ14)

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今回運ばれてきたご遺体は、どれも不思議なものだった。

どれも火傷による損傷が激しく、身元も定かではない。

そして今解剖してるご遺体2体とも手足に拘束されていた痕跡が残っていた。

『これは…………』

ふと私はあることに気づいた。

これだけしっかりと拘束の跡が残っているのならば、カンキンやナンキンの可能性は十分にある。

なのにしっかりと胃の中に消化中の食べ物が残っていたのだ。

焼けただれた肌ではわかりづらいが、目立った暴力を受けた跡もない。

ただ、二人とも手首にリ’ストカットのような跡があったのだ。

包丁のような刃物で薄く切った感じ。

その線が数本残っているのだ。

「な、なんかわかりました！？」

そこへ刑事さんが遅れてやって来る。

確か毛利さんだ。

走ってきてたのだろうか。

息が切れ、汗が滲んでいる。

「まだ解剖始めたばかりです。何もわかってませんよ」

三澄さんが手を動かしながら答える。

すると毛利さんはがっくりと肩を落とした。

「実は今回はちょっと厄介な事件なんですよ。

事件現場は六階建てのビルで爆破され、通報された時には火がまわり、火が消されるまで１時間もかかりました。

爆破されたと思われる最上階の部屋から十人の遺体が発見されました。

そして異様なことに…………

焼け残った壁に血で

"報復" "贖罪" "贄"

と書かれていたんですよ」