檸檬色の君【アンナチュラル】 (ページ13)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:30,338 hit

自爆テロは誰の為か　１ページ13

ASide

翌朝、私は重い体を持ち上げるようして起き上がる。

ソファーで寝たからだろうか。

体のあちこちが痛む。

正直昨晩のことはよく覚えていない。

中堂さんの顔色や反応を見る限り、特に何もなかったのだろう。

やがて次々と人が通勤し、あっという間に騒がしくなるラボ。

こんなにも活気の溢れた場所。

なのに運ばれてくるのは悲しい遺体。

今日もほら、行き場の無くした骸達がやって来る。

「え、まだ来るんですか？」

「あと七体ほどきます。全部で十体のご遺体です」

顔を歪めてポツリと溢れた東海林さんの問に、神倉さんがテキパキと答えた。

早速解剖が始まる。

どれだけ急いでも一日では終わらないだろう。

「ここ写真撮って」

「はい」

三澄班は手際よく仕事を終わらせていく。

しかし私のいる中堂班では…………。

「おい、ここを撮れ」

『命令される筋合いはありません』

「クソが！」

『クソクソ煩いですね。自分でやればいいじゃないですか』

「あー、くそ！」

「ね、Aちゃんがきてから中堂さんの元気が戻ったよね」

「何言ってるの東海林。またクソ暴言が通常運転になっただけじゃない」

「見て、坂本さんがムーミンみたいな顔してる」

その言葉に思わず吹き出す三澄さん。

私はそのやり取りを横目で見ながら手を動かした。

『全体的に火傷が凄いですね…………。死因は煙の中にある一酸化炭素を吸ったことによる中毒死』

「手首に何か縛った跡がある」

『これは…………縄みたいな跡ですね』

「足首もだ」

『でもこっちは跡が細いし縄状の跡がない』

「手足別々のもので縛られていたのか？」

「ねえ東海林」

「ん？」

「あの二人、結構息あうよ」

そう、不思議なことに中堂さんと解剖している時だけは気があった。

単に経験や技術のレベルが同じくらいなのか。

それとも何か別の共通点があるのか。

私はまだわからなかった。