檸檬色の君【アンナチュラル】 (ページ2)

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変わった法医学者　1 ページ2

ASide

熱い、熱い、熱い。

焼けるような痛み。

？「大丈夫、大丈夫だよ」

『いや、いや！取れないよ、痛いよ、熱いよ』

？「大丈夫だから」

『私が、私が………！』

？「………いいかい、A。君は何もしていない。全部俺が悪いんだ。Aを守れなかった俺が。だから泣かないで」

幼い私は必死に手を洗っていた。

背中から流れ出る生温かい血。

痛いくせに、その手は止めない。

いくら洗っても、手にこびりついたソレは取れることはなかった。

『落ちない……どうして、なんで』

赤い赤い、ソレは、幼く脆い心を容易く壊していく。

？「もう落ちてるよ。だからもう手を洗うのはやめよう？」

『ダメ！全然落ちてない』

私は泣きながら叫ぶ。

君はそれを困った表情をして見ていた。

そしておもむろに、ライターを取り出す。

『………何をするの？』

？「全部消してしまうんだよ」

『消す？』

？「そう、燃やしてしまおう」

彼は何かを見下ろした。

それは虚ろな瞳で空を見つめる、

私の愚かな両親。

光を失った瞳は人形のようで不気味だ。

二度と動くことのない二人。

ふいに、その指先が動いた気がした。

「この人殺しめ！」

気づけば、私は床に押し倒されていた。

もう動かないはずの母親が、

その冷たい手で私の首を締める。

容赦なく、私の細い首を締める。

「せっかくお前を育ててあげたのに。

お前だけが生き残るなんて。

お前もこちら側にこればいい。

また三人で楽しく暮らしましょ？」

楽しい？

そんなわけない。

待っているのは、地獄だけだ。

私は罪をおかした。

許されるはずのない、重い罪を。

だから罰を受けなければいけない。

なのに、私は生きている。

君が、私を生かしたから。

私を助けたから。

だから私は、生きなければならない………。