彼が有名になったのは好きな人を見つけるため。ただし私ではない

18話 ページ19

『…善逸？』


無言なのは珍しいな。いつもは五月蝿いのに


｢……て…たの｣

『え？なんて？』

｢だから、何話してたのって｣

『パンのことばかりだけど…』


知ってるでしょうに…あの白熱した私たちの会話を


｢そうだけど！そうじゃなくて！…その、その後の会話だよ！｣

『いや、それは…』


善逸が好きな、禰豆子ちゃんに対して嫉妬していたのを気付かれていたことを知らされた話なんて、言えない、言えるはずがない。


『早くに会っていたら善逸と同じようになっていたかも的なのは言われたかな』


これなら、大丈夫だ。嘘じゃないから音で分かるはずないし、変な意味じゃないだろうから。


｢だから、会わせたくなかったんだよ……ほんと、よ 良い判断をした、あの頃の俺…｣

『善逸？』


何を言っているんだ？


ブツブツ呟いていたかと思えばバッとこっちを見る。

びっくりした…


｢……炭治郎には！カナヲちゃんがいるから！｣

『え？』


そういえば、そうだったな。

あの炭治郎くんがカナヲの好きな人……現在は彼氏か…炭治郎くん相手ならカナヲが惚れるのも無理ないな。


そういえば、カナヲも鬼殺隊だったのだろうか？

前世の記憶を思い出しても、前世の善逸との会話全て覚えているわけじゃないから、よく出てきた3人しか覚えてないんだよな。



｢聞いてるの!?｣

『あ、ごめんごめん。カナヲの彼氏だってことはカナヲから聞いたよ。とっても仲良いって話も』

｢…炭治郎のことなんとも思ってないの？｣

『いい子だとは思うよ。あとパン作りの情熱をよく感じる』

｢そう……｣


一体なんなんだろうか…



｢俺、今新曲を作ってるんだ｣

『そうなの？この前発表してたばかりなのに…流石早いね』

｢うん……それで、それでさ！出来上がったら聞いて欲しいから……聞いてください！｣

『お、おう…わかった』


なんだか物凄く気合い入ってるな


｢あとさ、今度、おはぎ作ってよ｣

『…空いてる時なら良いよ』



善逸は嬉しそうに笑った。

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