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*


「知っての通り、安吾君はマフィアの情報員だ」

首領は物憂げに溜息をついた。

その表情は、行方不明となった部下の安否を心の底から心配している、という風に見えた。

「彼の頭の中には、マフィアに関する極上の秘密がぎっしり詰まっている。
マフィアの裏帳簿の管理方法、マフィアに上納している企業と役人の一覧、密輸品の定期取引相手の連絡先。
他の組織に売れば一財産だし、組織のアキレス腱を残らずぶつぶつに切ってから我々に火をつけることも出来る。
それが無かったとしても、安吾君は優秀で大事な私の部下だ。
何かあったならば助けたい。
私の気持ちが判るだろう?」


判るとは云えなかった。

闇組織を束ねる人間と一介の構成員では立場が違いすぎる。

「勿論です」

ただ私はディナーの添え物のように言葉を付け足した。


首領は机の上の羽根ペンを手にとって、指の先でくるくると回した。

「君はこの手の厄介事を専門にするそうだね。
撃ったり殴ったり脅したりばかりが得手なマフィアの中で、君のような人間は大変貴重だ。
期待しているよ」


どうも首領の勘違いが明らかになってきたようだった。

私は人捜しの専門家という訳ではなく、ただの丁稚だ。

確かにこの手の問題は大抵私の前に流されてくるが、その理由はおおむね私が「撃ったり殴ったり脅したり」のできないマフィアであるからに他ならない。


首領は機嫌の良さそうな顔のまま、机の引き出しから銀箔入りの越前和紙を取り出した。

そして羽根ペンで流れるように文字を書き込んだ。


*


『織田A

右の者 泰然自若なる所作にて紛々たる万事、破竹の如くせしむる也
容喙なく即ち扶くる可

鴎外』


*


「これを見せれば、組織内では何かと便宜が図られるだろう。
持っていくといい」


*

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包帯

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織田作之助


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ミュウ=ムー(プロフ) - 教えてくださり、ありがとうございます。 (2018年9月20日 19時) (レス) id: 1429768fb6 (このIDを非表示/違反報告)
kana(プロフ) - オリジナルフラグははずさないといけませんよ。違反行為なので (2018年9月20日 19時) (レス) id: 8d50bc542b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:皇帝ペンギンM← | 作成日時:2018年9月19日 21時

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