六十二話 ページ22
その会話を聞いて、僕は戦慄した。
その事が伝わってしまったのか、顔色を窺うように妹が僕の顔を覗いた。
その仕草に僕はハッとすると、妹にはそこにいるように伝え、すぐさま先程の会話を繰り広げた二人に近付いて行った。
近づいてきたことに気付いた二人は僕の方を向き、ぎょっとした表情を浮かべた。
「あっ……あの！今の…今の、どういうことですか」
僕が問うと、二人は顔を見合わせて困惑した表情を浮かべる。
どうするべきか、迷っているようだった。
「……ここで何も言わずに隠して事態が悪化するのは…良くないと思うんですが…」
それもそうだ、と言わんばかりに思い切り眉の両端を下げてまた二人で顔を見合わせる。
「うーん……実は、鶴霜夫妻が部屋から出て来ないんです…」
「そう…奥様が御主人を…どうも拉致して立て籠りをしているそうで…」
自分達でも何を言っているのか分かっていないような、現実味のないことを喋らされているような声色でそう言う。
「それは…先程も聞いてしまったんですけれど……えっと、どういうことか、詳しく教えて頂けませんか？」
「流石にそこまでは…お伝え出来ません…」
力なく首を振る一人と、申し訳無さげに御辞儀をするもう一人。
「……そうですよね、無理言って申し訳御座いません」
「えぇ…後は警察に委ねる積りですので……ご心配なく」
「…警察の方なら…大丈夫だと思いますので」
そう言う二人は、まだ不安の残る表情ではあった。
僕が何事も無かったように妹達の所へ戻り、ふと後ろを振り返ると、先程話した二人が焦った様子で廊下に出て行った。
多分、警察が到着したのだろう……着いて行くことはしなかった。
「貴方達が警察ですか？
「私達にここから出て欲しいと言うのなら
「私が言った人を、連れて来て下さい
きっと、この会場にもいる筈ですから」
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